は じ め に

歯科医療における院内感染予防のストラテジー

常務理事 大 浦   清

 今年も時として猛威をふるうインフルエンザの季節がやってまいりました。また、季節を問わずHBV、HCV、HIV、MRSA、SARS、結核、プリオン関連疾患などの感染症が歯科医療分野のみならず社会的にも問題となっております。問題が起こるたびにいつも感染予防対策が叫ばれておりますが、十分な予防対策が行われているとはいえないと思います。感染予防対策は、大学、病院では比較的システマティックに行われているようですが、末端の歯科医院までは十分に行きわたっていないのではないでしょうか。本学会は大学、病院、並びに歯科医院に勤務されている歯科医療従事者が共に研鑽する特徴をもっております。

 このたび、私が担当させていただきます第15回日本口腔感染症学会総会では、シンポジウムとして、「歯科医療における院内感染予防のストラテジー」のテーマでもう一度、院内感染予防について考えてみる企画に致しました。本学会では、例年多数の一般臨床歯科医師の先生方が参加されていることから、今回のシンポジストには、院内感染予防を率先して実践されている3名の開業歯科医師の先生方にそれぞれの診療所での予防対策を発表していただいております。それぞれの先生方の話をお聞きになり、参考にして頂き、各自に見合った確かな院内感染予防を実践されてはいかがでしょうか。

 1981年6月アメリカで最初にエイズ患者が発見されて以来、今年で25年になります。その後エイズウイルス(HIV)感染症は世界中で増え続けております(約6500万人)。日本でも2005年末で一万人を突破しており、右肩上がりに増えてきております。私も1983年から2年間、アメリカのNIHでエイズの研究にたずさわり帰国後、1993年、1994年と日本歯科医師会の歯学研修セミナーの講師として「歯科医療における感染予防対策―HIV、HBV、HCV、MRSA―」で予防を啓発してまいりました。そして20年近くも毎年数多くの講演、セミナーが各地で開催されているにもかかわらず実際の歯科医療現場において感染予防対策のシステムが十分構築されておらず、時として感染者の診療拒否の問題も起こってきております。現在、本学会では院内感染予防対策認定歯科医師および歯科衛生士制度を策定中であります。予防対策も日本だけではなく、グローバルスタンダードなものがいずれ必要とされるときが参ります。

 院内感染予防を確実に実践するためには歯科医療従事者はスタンダードプリコーションを適用し、確かなエビデンスに基づいた、常に安全な歯科医療を行っていくよう真剣に取り組んでいくべきではないでしょうか。