|
薬では治せない口腔内バイオフィルム感染症
東京歯科大学微生物学講座 教授
奥 田 克 爾
はじめに デンタルプラークは、 複数の細菌がコミュニィティーを作って住み着くバイオフイルム (biofilm) で、 その除去が難しい厄介な細菌集団である。 口腔内バイオフィルム細菌は、 誤嚥性肺炎、 動脈硬化部位、 心臓冠状動脈疾患、 発熱、 骨粗鬆症、 糖尿病肥満、 妊娠トラブルに関わるという情報が増え、 全身性疾患に関与するという概念が確立した。 歯周病原菌を中心とした口腔内バイオフィルム細菌が全身の健康破綻に繋がることについて、 私たちのデータを中心に紹介し、 解説したものである。
抗生物質などの抗菌薬の開発や公衆衛生の進歩によって、 ある程度細菌感染症征圧に成功したが、 新しいウイルス感染症や耐性を獲得した結核菌などとの終わりなき戦いを強いられている。 さらに、 私たちの体にバイオフィルムとして頑固な状態で住み着く細菌に対して、 抗菌薬はほとんど効果を発揮することができない。 そのようなバイオフィルム感染症は、 激増している。 バイオフィルムの典型であるデンタルプラーク感染症は、 抗菌薬では治せないマンパワーが求められる感染症であると共に、 適切な治療をしないと健康破綻に繋がってしまう。
1. 口腔内バイオフィルム細菌は会話して集団
となる 自然界では、 下水管をつまらせたり、 湿っている場所をぬるぬるさせたりする細菌集団がバイオフィルムである。 ぬるぬる集団 (slime buster) とかぬるぬるお化け (slime monster) などと言われる。 代表的なバイオフィルムが、 複数の細菌からなるデンタルプラークである。 バイオフィルムの産生するぬるぬるの本態は、 菌体外に合成する多糖体で、 glycocalyx とよばれる。 Glycocalyx は、 ムコイド (mucoid) や菌体外多糖物質 (EPS) などとも呼ばれる。 バイオフィルム形成微生物は、 持続感染して抗菌薬療法などが卓効しない難治性慢性感染症を作る。 緑膿菌、 ブドウ球菌、 肺炎球菌、 セラチア菌などは、 ICU などで命のパイプとなるカテーテルなどにバイオフィルムを形成し、 肺炎や院内感染を起こす。 清掃のよくない義歯には、 主として Candida albicans がバイオフィルムとなってぬるぬるしたデンチャープラークとなる。
細菌は、 自分達が住み着いて増殖できる環境では、 シグナルを出して一定の数に達する。 そして、 自分達の住む環境が悪くなると、 シグナルを出して増殖をストップさせている。 細菌同士がそのような情報伝達に使うシグナルは、 細菌性フェロモンあるいはホルモンといわれる。 細菌の生存や増殖に関わるシグナルは、 自己誘導体ともいわれる。 自己誘導で、 最もはやくから解明されてきたものが、 菌の密度を調節する QS システム (quorum sensing system) といわれるものである。 Quorum とは、 会議に参加する定数のことで、 sensing は、 感知するということである。 多くの細菌は、 この QS シグナルを産生してそれぞれの増殖する場所で自分達の密度を調節し、 病原性に関わる様々な因子の産生を調節している。 細菌が産生する QS シグナル分子は、 細菌の細胞質膜などを自由に通過するため周囲の細菌に菌種を超えて伝達される。 デンタルプラークは、 複数の細菌が形成するバイオフィルムの典型的なものである (図1)。 デンタルプラークの多くの細菌は、 細胞間情報伝達物質である QS シグナルをもつことによって、 それぞれの部位で縄張りを築き、 バイオフィルムという生態系 (ecosystem) を築いている。 1)、 2)、 3)
2. 口腔内バイオフィルム細菌が生涯にわたっ
て住み着く バイオフィルムは、 成熟するときのこ状になる。 成熟したバイオフィルムは均一ではなく、 水を通すチャネルが作られる。 チャネルを介して栄養源を取り入れ、 自分達の環境を破壊するような老廃物を排出する。 このバイオフィルム細菌に対して、 抗菌剤は有効に作用しない。 バイオフィルム表層の菌体は、 抗菌剤に感受性を示す。 しかし、 抗菌薬も消毒薬もバイオフィルムに浸透しない。 そのため、 中心部の細菌は、 攻撃をほとんど受けない (図2)。
私達の体には、 生まれつきにもっている自然免疫と生後成立する獲得免疫が働いて、 外部から侵入する微生物を排除する防御機能が備わっている。 タンパク質抗原に対しては、 速やかにT細胞やB細胞が反応する。 ところが、 バイオフィルム形成物質といえる多糖体抗原である glycocalyx に対しては、 T細胞が関与しないため免疫学的応答が容易に起きてこない。 また、 バイオフィルム排除に作用するような特異性抗体が産生されたとしても、 バイオフィルム表面の細菌にしか作用しない。 さらに、 食細胞が関連する免疫学的応答は、 バイオフィルム表面の菌体を駆逐することはできても、 集団となっているバイオフィルム菌体を食菌して殺菌することはできない。 したがって、 生涯にわたって住み着く細菌の手段がバイオフィルム形成である。
3. 歯周病原性細菌バイオフィルムの循環障害
への関与
1) 歯周病原菌は血流に入り込む
動脈硬化などの虚血性疾患には、 高脂血症、 肥満、 喫煙、 遺伝的要因などさまざまな因子が関わっている。 1980年代に入り、 血管内皮細胞内に呼吸器疾患を起こす Chlamydia pneumoniae が検出されるという報告がされた。 また、 Helicobacter pylori やヒトサイトメガロウイルスが病因になることも指摘された。 これらの知見は、 微生物感染が炎症を起こし、 動脈硬化に関与することを示唆するものである。 4)、 5)
一連の研究を基に、 Ross は6) アテローム (粥状硬化症) の成立には、 血管の炎症による細胞傷害が関わるという response to injury hypothesis を発表した。 微生物感染などが血管内皮細胞を傷害することが、 血管内皮細胞を活性化し、 炎症性細胞を集積させることが原因になる。 血流中の単球が内皮細胞に侵入してマクロファージに分化する。 血管内皮に集積したマクロファージは、 悪玉コレステロールともよばれる低比重リポタンパク質 (LDL) を取り込んで泡沫細胞 (foam cell) になり、 動脈硬化の初期病変を形成し、 進行した繊維性プラーク (fibrous plaque) などを形成する。
デンタルプラーク細菌は、 歯周病が進行すると頻繁に血流に入り込んでいると考えられる。 代表的な歯周病原菌 Porphyromonas gingivalis は、 赤血球を凝集する。 7) 近年、 P. gingivalis は、 血小板を凝集し、 血漿を凝固させることも明らかにされた。 8) P. gingivalis が血流中に入り込んで血液の凝固を起こし、 血栓を作るなど循環障害を起こすと考えることができる。 9)
2) 動脈疾患部位に歯周病原菌が検出される
歯周病原菌が動脈硬化部位に見つかるという事実は、 カナダや北米の研究グループによって示された。 筆者ら 10)、 11) は腹部動脈瘤部位に歯周ポケット内で爆発的に増加する Treponema denticola がみつかることを発表した。 すなわち、 動脈硬化部位の包埋標本から DNA を抽出し、 T. denticola の DNA が混入しているか RT-PCR 法で調べたところ、 26名の患者サンプルのうち6名の標本に T. denticola の DNA を検出することが出来た。 さらに、 T. denticola の抗原は、 T. denticola の DNA が検出された切片標本に存在することを蛍光抗体法で証明した。
ついで私たちは、 12)、 13) 心冠状動脈の狭窄をもたらしている血管内壁プラークサンプル中に歯周病原菌が検出されるか調べた結果を図3に示した。 P. gingivalis、 Actinobacillus actinomycetemcomitans、 Campylobacter rectus、 Tannerella forsythensis、 T. denticola の16S rRNA が心冠状動脈内壁プラークから検出できた。 また、 その検出率は、 歯周病の進行程度すなわち歯周ポケットの深さおよび歯周病の局所からの検出率と関連することがわかった。 この結果は、 歯周病原菌が歯肉内縁上皮を貫通して血液中に入り込んでいることを示すものといえる。
3) P. gingivalis は実験動物で動脈硬化起こす
Li らは、 14)脂質代謝遺伝子を欠損させた動脈硬化促進 ApoE ノックアウトマウスに高脂質食事を与え、 P. gingivalis 生菌を静脈内に毎週一回、 24週にわたり注射するとマクロファージが集積した動脈硬化が促進されることを証明した。 接種された P. gingivalis は、 動脈、 肝臓、 心臓に検出されることも示している。 ついで、 歯を結紮したウサギに P. gingivalis を口腔内感染させて歯周病を起こさせると、 大動脈にリピド沈着が増えることが明らかにされた。 15) さらに、 ブタに5ヶ月間にわたり週3回静脈内に P. gingivalis を接種し続けると、 心冠状動脈硬化が起きることが示された。 36) これらの実験は、 歯周病が循環障害を起こし、 心疾患のリスクファクターであることなどを裏付けるものである。
4 口腔内バイオフィルム細菌と呼吸器感染症
1) 誤嚥性肺炎の原因菌である
誤嚥性肺炎の起因微生物は、 口腔・咽頭に潜伏している。 誤嚥性肺炎は、 老人を中心としていることからいわゆる老人性肺炎といわれる重篤な感染症であり、 死亡率の高い感染症である。 デンタルプラーク細菌などのバイオフィルム形成細菌が唾液に混入して下気道に吸引されて呼吸器感染症を起こす。 P. gingivalis, Prevotella intermedia などの嫌気性菌が誤嚥性肺炎病巣や肺膿瘍などから分離される。 誤燕性肺炎病巣からは、 単独菌種として検出されることがなく、 歯周病原性嫌気性グラム陰性菌の混合感染として見いだされる。 17)
2) 口腔内バイオフィルム細菌のインフルエンザウイルスへの関与
インフルエンザウィルスの血球凝集素である hemagglutinin (HA 抗原) は、 neuraminidase (NA 抗原) と共に本ウィルスが細胞内進入する際の鍵をにぎる因子である。 インフルエンザウィルスの HA は、 インフルエンザウィルスエンベロープとウィルス吸着細胞質膜の融合に関わることが明らかにされている。 上気道に感染している細菌は、 プロテアーゼを産生し、 HA に働き HA1と HA2に切断する。 上気道に感染する細菌のプロテアーゼは、 インフルエンザウィルスの HA を HA1と HA2に切断する結果、 インフルエンザウィルスのエンベロープと上気道や肺の細胞質膜との融合がおきウィルスが侵入して複製される (図4)。 一方、 インフルエンザウィルスの neuraminidase は、 本ウィルスの細胞から細胞への感染においてきわめて重要な働きをしている。 39) 近年、 neuraminidase 阻害剤のオセミタミビルの商品名タミフル (Tamiflu) が治療効果が高く評価されている。 口腔内グラム陰性菌には、 neuraminidase を産生するものが存在し、 インフルエンザウィルス細胞感染を助けて重篤化させると考えられている。 事実、 上気道に肺炎球菌、 インフルエンザ菌およびブドウ球菌などが感染しているとそのインフルエンザは重篤となり、 死亡率が高くなる。
私たちは、 18)、 19) 今まで要介護高齢者に対して歯科衛生士が週一回口腔清掃を中心とした口腔ケアを行うと、 発熱や誤嚥性肺炎が有意に少なくなることを報告してきた。 今回、 デーケアに通う高齢者に対する歯科衛生士による週1回の口腔ケアと口腔清掃指導が唾液中のトリプシン様プロテアーゼと neuraminidase を減少させる効果があることを明らかにした。 要介護高齢者への6ヶ月間にわたる継続した口腔ケアは、 有意に唾液中トリプシン様プロテアーゼおよび neuraminidase を減少させた (図5)。 同時にインフルエンザ発症についても調べた。 インフルエンザは、 診断キットで調べたところ、 インフルエンザ患者は、 口腔ケア実施群の98名中1名 (1.0%)であったのに対して非実施群は92名中9名 (9.8%) であり有意に口腔ケア実施群で少なかった (P<0.01)。 2003/2004年の冬季間のインフルエンザワクチンの感染予防効果は、 30%以下で、 高齢者にほとんど効果がなかったことが報告されている。 私たちの本研究では、 非口腔ケア実施グループを含めて高齢者がインフルエンザ予防ワクチン接種していたか、 いなかったかに関連性はなかった。 すなわち、 デーケアに通う要介護高齢者に対する口腔ケアは、 結果としてインフルエンザ予防接種の受けたことに関係なくインフルエンザ予防効果のあることを明らかにした。 20)
慢性歯周炎リスクのなかで、 red zone といわれる部位からは、 P. gingivalis、 T. forsythensis および T. denticola が共に検出される。 P. gingivalis の gingipain、 T. denticola の dentilisin さらに T. forsythensis のプロテアーゼはそろってトリプシン様酵素で、 その測定は慢性歯周炎の診断にも使えることを発表してきた。 唾液中に混入するインフルエンザ感染をサポートするトリプシン様プロテアーゼは、 咽頭部に感染するブドウ球菌、 インフルエンザ菌、 肺炎球菌などが産生したものと密接に関わっていると考えられる。 今後、 歯周病原性バイオフィルム形成細菌は、 インフルエンザウイルスの HA を HA1と HA2に解裂させるか否か調べる必要がある。 筆者は、 歯周病の予防や治療の大切さを、 呼吸器感染症予防に繋げることからも強調していきたい。
5. 全身性疾患への関わり
ここでは、 循環障害と呼吸器感染症への関わり以外のものについても紹介することとした。
1) 糖尿病と肥満
内毒素は、 脂肪細胞から IL-1, IL-6および TNF-αなどのサイトカイン産生をもたらす。 さらに、 脂肪細胞からレプチン、 アディポネクチン、 アディプシンなどのアディポサイトカインという生理活性物質の産生と放出が起きる。 特に、 TNF-αは、 そのレセプターを介して骨格筋細胞や脂肪細胞の糖の取り込みを阻害する。 そのため、 インスリン抵抗性になってU型糖尿病が進行すると考えられる。
近年、 歯周治療によって歯周病原性バイオフィルム細菌を減らすと、 TNF-α産生が低下するため血糖値などが低くなるという知見が内外の研究グループから報告されてきた。 これらのエビデンスを基に、 歯周病医学 (periodontal medicine) の概念が確立してきている。
2) 骨粗鬆症
骨粗鬆症は、 骨の病的変化であり、 自覚症状のはっきりしない高齢女性を中心とした疾患である。 骨粗鬆症による大腿骨骨折などは、 QOL や ADL を低下させてしまう。 女性ホルモンであるエストロゲンは、 骨形成サイトカインとして働くトランスフォーミング増殖因子β (TGF-β) やインスリン様増殖因子1 (IGF-1) を産生することによって、 骨代謝を調節している。 エストロゲン分泌低下に伴い、 それらの骨代謝機能が破綻し、 骨粗鬆症が起きる。 骨粗鬆症は、 歯周病のハイリスクでもある。
内毒素は、 マクロファージなどから IL-1, TNF-αおよび PGE 2 などの産生をもたらす。 その結果、 破骨細胞分化因子 (receptor activator of NF-κB ligand, RANKL) の発現が起きるため、 IL-1 β, IL-6などの骨吸収性サイトカイン産生が亢進する。 さらに、 これらの骨吸収サイトカインは、 骨芽細胞の RANKL を発現亢進させ骨粗鬆症の原因の一つになると考えられる。
3) 妊娠トラブル
早産や低体重児出産などの妊娠トラブルは、 腎盂腎炎や尿道炎などの感染症によって起きることが多い。 歯周病原性菌内毒素もそのトラブルの原因であることが示された。 歯周病原性 P. intermedia は、 胎盤で作られるホルモンであるエストラジオールを発育ビタミンとして利用する。 妊娠時に P. intermedia が歯周局所で爆発的に増えれば、 出血しやすく浮腫性の歯肉炎になる。 出血がみられると、 血液成分を栄養素とする嫌気性グラム陰性菌が、 爆発的に増加するため、 内毒素産生が増える。 内毒素は、 そのレセプターをもつマクロファージなどに結びつくため、 IL-1、 IL-6、 TNF-αが PGE 2 の産生を誘導する。 その結果、 子宮収縮が起きて妊娠トラブルとなると考えられる。
4) 掌蹠膿疱症
掌蹠膿疱症は、 歯科用金属による遅延型アレルギーに基づく場合が多い。 しかし、 季節的な症状の憎悪もみられるし、 特定のウイルス感染によるものもあると言われている。 私たちは、 口腔内バイオフィルム慢性感染症が関与しているか検討してきた。 歯周病原性細菌の HSP は、 歯肉内縁上皮などを通り抜け掌や足の裏で免疫病理学的応答を引き起こし、 それが掌蹠膿疱症の原因になっていることも考えられる。 21)
6. おわりに
デンタルプラークは、 複数の細菌が会話しながら歯面に築き上げるバイオフィルムである。 宿主防御メカニズムならびに抗菌剤では、 たち向かうことができない敵である。 ぬるぬるした状態で頑固にへばり着くバイオフィルム形成を阻止する新しい薬剤の開発、 およびバイオフィルムを破壊する免疫学的手段を確立することは難しい。 マクロライド系抗菌薬は、 緑膿菌などのシグナルをじゃまして、 大きなバイオフィルムにさせない働きがあり、 肺繊維症、 肺膿瘍の治療に使われている。 しかしながら、 口腔内慢性感染症に対しての長期的なその使用は不可能である。 したがって、 口腔内バイオフィルムを取り除くには、 メカニカルに取り除く PMTC やスケーリング、 ルートプレーニングを凌駕するものは見当たらない。 マンパワーを必要とし、 卓抜した手技による口腔内バイオフィルム感染症の予防と治療は、 さまざまな全身性疾患の予防やヘルスプロモーションに繋がるものと確信している。
参考文献
1. 奥田克爾著:最新口腔微生物学、 一世出版、 2005.
2. 奥田克爾著:口腔内バイオフィルム、 医歯薬出版、 2004.
3. 奥田克爾著:命を狙う口の中のバイキン、 一世出版、 2001.
4. Okuda K, Ishihara K. and Kato T. Involvement of periodontopathic biofilm in vascular diseases. Oral Diseases, 10:5-12, 2004.
5. 奥田克爾、 加藤哲男、 石原和幸: 歯周病原性バイオフィルムは動脈硬化に関わる?歯科学報、 103:775-783, 2003.
6. Ross R. Atherosclerosis-An inflammatory disease. N Engl J Med 340: 115-126,1999.
7. Okuda K, et al. Hemagglutinating activity of lipopolysaccharides from subgingival plaque bacteria. Infect Immun 55: 3192-3196, 1987.
8. Imamura T, et al. The biphasic virulence activities of gingipains: activation and inactivation of host proteins. Curr Protein Pept Sci 4:443-450, 2003.
9. Naito M, et al. Porphyromonas gingivalis-induced platelet aggregation in plasma depends on Hgp44 adhesin but not Rgp proteinase. Mol Microbiol 59:152-167, 2006.
10. Okuda K, et al. Involvement of periodontopathic biofilm in vascular diseases. Oral Dis 10: 5-12, 2004.
11. Okuda K, et al. Detection of Treponema denticola in atherosclerotic lesions. J Clin Microbiol 39: 1114-1117, 2001.
12. Ishihara K, et al. Correlation between the detection of periodontopathic bacterial DNA in carotid coronary stenotic artery plaque with dental plaque. J Clin Microbiol 42: 1313-1315, 2004.
13. Ishihara K, et al. Need for procedural details in detection of periodontopathic bacterial DNA in the atheroscrematous plaque by PCR. J Clin Microbiol 42: 4914-4915, 2004.
14. Li L, et al. Porphyromonas gingivalis infection accelerates the progression of atherosclerosis in a heterozygous apolipoprotein E-deficient murine model. Circulation 105: 861-867, 2002.
15. Jain A, et al. Role for periodontitis in the progression of lipid deposition in an animal model. Infect Immun 2003 71:6012-6018, 2003.
16. Brodala N, et al. Porphyromonas gingivalis bacteremia induces coronary and aortic atherosclerosis in normocholesterolemic and hypercholesterolemic pigs. Arterioscler Thromb Vasc Biol 25:1446-1451, 2005.
17. Okuda K, et al. Involvement of periodontopathic biofilm in respiratory infections. J Periodontol 76: 2154-2160, 2005.
18. Abe S, et al. Prevalence of potential respiratory pathogens in the mouths of elderly patients and effects of professional oral care. Archs Gerontol Geriatri 32: 45-55, 2001.
19. Adachi M, et al. Effect of professional oral health care on elderly living in nursing homes. Oral Sur Oral Med Oral Path Oral Rad Endodontics 94: 191-195, 2002.
20. Abe S, et al. Professional oral care reduces influenza infection in elderly, Arch Geront Geriat, in press, 2006.
21. Ishihara K, et al. Relationship bwtween the onset of pustulosis parmalis et plantaris, chronic oral infections, and heat shoch proteins. Oral Microbiol Immun 15:232-237, 2000.
はじめに インフルエンザに関して、 最近最も注目を集めているのは、 新型インフルエンザである。
現在、 トリインフルエンザのA (H5N1) がアジアに発生し、 ヨーロッパへ、 さらにはアフリカまでに達している。 このA (H5N1) のような病原性の強いインフルエンザウイルスが、 新型インフルエンザとして登場してくるのではないかと恐れられている。
1. 20世紀におけるインフルエンザのパンデミック 20世紀におけるパンデミックとしては、 図1に示すような1918年のスペインかぜ、 1957年のアジアかぜおよび1968年の香港かぜが有名である。 これらのパンデミックによる世界での死亡者数はスペインかぜでは2,000〜4,000万人、 アジアかぜでは200万人、 香港かぜでは100万人とされている。 スペインかぜ、 イタリアかぜ、 アジアかぜなどは、 約10年間の流行で消えているが、 現在流行している香港型は38年間も持続している。 いつの日か香港型が退場し、 新型インフルエンザが出現するのではと恐れられるゆえんである。 最も被害が多かった1918年のスペインかぜと予想される新型インフルエンザの比較を図2にまとめて示す。
現在のトリインフルエンザウイルスA (H5N1) の死亡率の高さから、 もしこの強い病原性のままでヒトからヒトへ感染するウイルスに変異した場合には、 スペインかぜに匹敵するのではないかと考えられている。 1918年の世界の人口は約18億であったが、 現在は65億に達し、 当時はウイルスが世界中を巡るのに4ヶ月かかったとされたが、 現在では4〜7日間で世界中に伝播すると言われている。
1918年のスペインかぜ流行の場合、 世界中で罹患者6億人、 死亡者4,000万人とすると極めて高い死亡率であり、 新型インフルエンザがこのような高率の罹患率および死亡率で登場すると極めて危険である。
スペインかぜの時代には抗インフルエンザ薬、 ワクチンも無く、 治療法も安静、 アスピリンなどの対症療法に終始せざるを得なかった。 しかし、 これに反し、 現在、 われわれはインフルエンザに対する武器を有している。 すなわち、 ワクチン製造の技術、 優れた抗インフルエンザ薬等である。 しかし、 ワクチン製造には時間がかかり、 すぐには役にはたたないので、 抗インフルエンザ薬の備蓄がすすめられるわけである。
2. A (H5N1) の流行
A (H5N1) は、 2006年3月14日現在、 確定症例数177例、 死亡者数98例と報告されている (表1)。 死亡者も感染者も若年者に多く、 高齢者に少ないのが特徴である。 すなわち、 感染者は9歳以下で最も多く、 加齢と共に減少するが、 40歳以上は少ない。 死亡例は10歳代が最も多く、 50%以上の死亡率であった。
このように WHO により確認された症例数は177例であるが、 実際はこれ以上存在していると考えられる。
臨床経過は、 早期症状としては、 通常のインフルエンザでは上気道症状および強い全身症状が主であるが、 鳥インフルエンザでは、 殆どの場合、 受診時にすでに下気道の症状がみとめられている。 発症から平均して5日目に呼吸困難が生じたとの報告もある。 最も重要な点は、 ほぼすべての患者に臨床的に明らかな肺炎が存在し、 X線像で、 びまん性、 多発性、 斑状の浸潤、 間質性浸潤などがみとめられていることである。
このようにA (H5N1) の臨床像としては、 早期より下気道に達し、 肺炎を合併する。 しかもその肺炎はインフルエンザウイルス自体によるウイルス性肺炎が考えられている。
一方、 現在のところヒトからヒトへの明らかな感染としては、 家族内あるいは母子間での感染のみがみとめられているが、 多くは鳥類からヒトへの感染である。 A (H5N1) が世界的に鳥類さらには、 種をこえて猫などに感染するとヒトからヒトへ容易に感染するようになる危険性が考えられ、 早期の診断および対策が必要となる。
幸い、 現在われわれは、 A (H5N1) に有効なノイラミニダーゼ阻害剤 (ザナミビルおよびオセルタミビル) を有している。 A型に有効なアマンタジンは、 A (H5N1) には耐性があり、 使用はすすめられていない。
新型インフルエンザ対策として、 世界的にオセルタミビルの備蓄がすすめられている。 オセルタミビルは全年齢層に対する治療および予防に使用可能であるからである。 しかし、 一部ではA (H5N1) に対しては必ずしも有効ではないとの報告もあり、 耐性ウイルスの出現も心配されている。
この、 オセルタミビルは通常のインフルエンザは治せても、 ウイルス性肺炎はおさえきれず使用中に耐性ウイルスが出現することも考えられる。 従って、 今、 最も重要なことは、 ウイルス性肺炎に対する治療法の確立であろう。 すなわち、 オセルタミビルの投与量および期間、 ザナミビルによる気道への直接薬剤散布、 ザナミビルとオセルタミビルの併用療法などを検討する必要がある。
3. 従来のインフルエンザ対策
A (H5N1) をトリインフルエンザの代表として述べてきたが、 従来のインフルエンザも毎年のように流行し、 多大の被害を与えているのも事実である。 現在行われている治療および予防について簡単に述べる。
1) 治療
図3に示すように、 発病48時間以内では抗ウイルス薬が有効である。 単純型インフルエンザの場合には、 抗ウイルス薬のみで経過は良好であるが、 高齢者、 ハイリスク患者等では抗生物質の併用も必要である。 表2に現在使用可能な抗インフルエンザ薬を示す。
図4にAおよびB型に現在わが国で最も多く使用されているオセルタミビル投与後の解熱時間を示すが、 A型に比べB型は解熱時間が長い。 すなわち、 オセルタミビルはB型に有効ではあるが、 A型に比べて効果が低いことは注意すべきである。
2) 予防
最も重要なことはインフルエンザワクチンによる予防であるが、 図5に過去4年間のワクチン効果を示す。
2001/2002および2002/2003シーズンではA型では約70%の有効率であったが、 2003/2004および2004/2005シーズンでは約30%と有効率は低下した。 これは、 ワクチン株と流行株の抗原性の変異によるものであった。 従って、 ワクチン株と流行株が合致すると約70%の効果があるものと考えられる。
副作用は軽度な局所反応が約1.5%にみとめられた。
おわりに 現在、 新型インフルエンザ対策の必要性が世界中で述べられている。 前述のオセルタミビルの備蓄の他、 早期診断および情報の伝達などを今のうちに用意することが極めて重要である。
|