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唾液中の口腔レンサ球菌とミュータンスレンサ球菌定量に対する
2種類の歯垢染色剤の影響
岡山 秀仁 1,4)、 井田 博久 2)、 野村 義明 3)、 花田 信弘 4)
The influence of two kinds of plaque disclosing agents to
oral streptococci and mutans streptococci
Hidehito OKAYAMA 1,4), Hirohisa IDA 2), Yoshiaki NOMURA 3), Nobuhiro HANADA 4)
Abstract:We examined the influence of two kinds of plaque disclosing agents for the salivary levels of oral streptococci and mutans streptococci. The principal component of Prospec was frokishin and the principal components of Two-tone TM were frokishin and brilliant blue. Both salivary levels of oral streptococci and mutans streptococci were decreased after disclosing, when compared to the before disclosing. Therefore, we concluded that the sampling of human saliva was preferable before disclosing for accurate in caries risk evaluation.
Key Words:disclosing agents (歯垢染色剤), saliva (唾液), oral streptococcal (口腔レンサ球菌), mutans streptococci (ミュータンスレンサ球菌)
1) 財団法人8020推進財団 8020 Promotion Foundation
2) 潟rー・エム・エル BML,Inc.
3) 鶴見大学歯学部予防歯科学講座 (主任:鶴本明久教授)
Departmens of Pediatric dentistry, Tsurumi University School of Dental Medicine (Chief:Akihisa Tsurumoto)
4) 国立保健医療科学院 口腔保健部 (主任:花田信弘部長)
Department of Oral Health,National Institute of Public Health (Chief:Director,Nobuhiro Hanada)
〔2005年8月5日受付、 2005年9月28日受理〕
緒 言
う蝕は、 歯垢 (dental plaque) と呼ばれる歯面上に形成される細菌膜 (biofilm) 内に棲息するミュータンスレンサ球菌などの乳酸産生能をもつ細菌による細菌感染症である。 なかでも、 Streptococcus mutans (S. mutans) と Streptococcus sobrinus (S. sobrinus) の2菌種がヒトのう蝕発症に深くかかわつている 1)。 歯科における歯垢検出技術としては、 薬剤による染色技術がある。 一般的に、 歯垢染色剤は歯科医院で使用される機会が多いが、 保育園や幼稚園、 小学校などでも使用される頻度が増えてきている。 また、 歯科医院においては歯口清掃の動機づけや日常のブラッシングによる歯口清掃状態の評価だけでなく、 う蝕リスク診断の際に用いられるようになってきた。 一般的にう蝕リスク検査は刺激唾液を検体とし、 唾液中に含まれるミュータンスレンサ球菌を培養法により定量することを主体として行われる。 唾液検体採取において歯面上に存在する歯垢やその中に含まれるミュータンス菌量が検査値に反映されるため、 検体採取に際し、 食後の経過時間等が規定されている。 しかし、 う蝕リスクを評価する際、 唾液検体を染色前に採取したり、 染色後に採取したりと歯垢染色剤の使用手順に関しては統一された見解が提示されていない。
そこで本研究では、 フロキシンを主成分とする Prospec と新しいプラークと古いプラークを染め分けるフロキシンとブリリアントブルーを成分とする Two - tone TM の2種類の歯垢染色剤を用いて、 ヒトの唾液中の口腔レンサ球菌とミュータンスレンサ球菌検出に対する影響を検討したので報告する。
材料と方法
1) 対象者
健康な成人ボランティア7名 (男性5名、 女性2名、 平均年齢39.4歳、 年齢範囲28〜58歳) を対象とした。 被験者に対して事前に十分な説明を行った上で、 被験者から自由意思に基づく同意を得た。
2) 採取時期および唾液採取
採取は食後2時間以上経過後に行つた。
2種類の歯垢染色剤 Prospec (GC、 東京) と Two - tone TM (ヘレウスクルツアージャパン、 東京) を用いて、 歯垢染色剤使用前と使用後に、 対象者にパラフィンワックスを5分間噛んでもらい、 刺激唾液を採取した。
3) 使用培地および塗抹法
培地は、 総レンサ球菌数算定用に Mitis-Salivarius (MS)培地 3) (Difco Laboratories, Detoroit., USA) を、 ミュータンスレンサ球菌数算定用に BML (東京)より供与された改良 MSB 培地 4)を使用した。 唾液検体を Phosphate buffer saline (pH7.2) (PBS) で希釈後、 それらの50μl をスパイラル装置 (グンゼ産業、 大阪)を用いて、 それぞれの菌数算定用培地に塗抹した。
4) 培養および菌数算定法
37℃下で48時間、 アネロパック (三菱ガス化学、 東京) を用いて培養し、 実体顕微鏡下で総レンサ球菌数とミュータンスレンサ球菌数の算定を行った。
5) ミュータンスレンサ球菌の同定
実体顕微鏡下でミュータンスレンサ球菌様コロニーを釣菌し、 Brain Heart Infusion 液体培地 (BHI) で増殖後、 レンサ球菌同定キット Api strepto 24 (biomerieux 社、 France) を用いた。
6) 統計学的検定
染色前後の菌数の各染色剤に対するサンプルの比較に対しては Mann-Whitney 検定を染色前後の菌数の比較に対して Wilcoxon の符号付き順位検定を行った。
結 果
2種類の歯垢染色剤 Prospec と Two-tone TM の各成分を示した (表1)。 ヒトの唾液中の口腔レンサ球菌とミュータンスレンサ球菌数に対する Prospec の影響 (log 10 CFU/ml) を示した (図1、 3)。 染色前の Prospec と Two-tone TM の各群の術前の値は統計学的有意差が認められなかった (口腔レンサ球菌 P=0.620, ミュータンスレンサ球菌 P=0.209)。 Prospec による染色後、 ヒトの唾液中の口腔レンサ球菌とミュータンスレンサ球菌は、 対象者7名全てにおいて、 染色前と比較し、 菌数 (log 10 CFU/ml) が減少し統計学的有意差が認められた (口腔レンサ球菌 P=0.02, ミュータンスレンサ球菌 P=0.03)。 特に、 ミュータンスレンサ球菌は、 対象者7名中6名において検出限界以下まで減少した。 染色剤同士の比較では、 術後の口腔レンサ球菌では有意差が認められなかったが (P=0.710)、 ミュータンスレンサ球菌で有意差が認められた (P=0.011)。 ヒトの唾液中の口腔レンサ球菌とミュータンスレンサ球菌検出に対する Two-tone TM の影響 (log 10 CFU/ml) を示した (図2、 4)。 Two-tone TM による染色後、 ヒトの唾液中の口腔レンサ球菌,ミュータンスレンサ球菌ともに減少傾向が認められ統計学的有意差が認められた (口腔レンサ球菌 P=0.04, ミュータンスレンサ球菌 P=0.03)。
考 察
歯垢染色剤は、 主として液状のものが多く、 他にジェル状のもの、 錠剤のもの、 歯磨剤に添加したものなど数種類が開発され、 市販されている。 歯垢染色剤の基本成分は、 色素、 水、 アルコールであり、 色素は歯垢を染色するために含有されている成分であり、 主成分はエリスロシン (食用赤色3号)、 フロキシン (食用赤色104号) などの食用色素である。 歯垢染色剤のほとんどに食用色素が含有されているが、 食用青色のブリリアントブルー (青色1号) が含有されているものもある 2)。 我々はフロキシンを主成分とする Prospec とフロキシンとブリリアントブルーを成分とする Two-tone TM の2種類の歯垢染色剤を用いて、 唾液中の口腔レンサ球菌とミュータンスレンサ球菌数に対する影響を検討した。 その結果、 Prospec 、 Two-tone TM 共に唾液中の口腔レンサ球菌とミュータンスレンサ球菌検出に対して減少傾向があることを明らかにした(図1、 2、 3、 4)。 歯垢染色後では、 唾液中の菌数が減少する事から、 唾液検査を正確に行うためには、 染色前の採取が望ましいと考えられる。 唾液中の菌数の減少に染色剤中の成分が大きく関与していると考えられるが、 どの成分が影響を与えているのかは今後の検討課題である。
結 語
本研究では、 フロキシンを主成分とする Prospec とフロキシンとブリリアントブルーを成分とする Two-tone TM の2種類の歯垢染色剤を用いて、 ヒトの唾液中の口腔レンサ球菌とミュータンスレンサ球菌数に対する影響を検討し Prospec 、 Two-tone TM 共に唾液中の口腔レンサ球菌とミュータンスレンサ球菌数に対して影響があることを明らかにした。 染色後では唾液中の菌数が減少する事から、 う蝕のリスク検査における唾液採取を正確に行うためには、 染色前の採取が望ましい。
引用文献
1) 竹内 武男:う蝕罹患経験の異なる4学生群からの歯垢懸濁液中ミュータンスレンサ球菌種の検出者率および菌数レベルの比較. 口腔衛生学会雑誌52:330−331, 2002.
2) Kieser, J.B. and Wade, A.B:Use of food colourans as plaque disclosing agents. J Clin Periodontol 3(4):200−207, 1976.
3) Chapman, G.H.:The isolation and testing of fecal streptococci. Am J Digest Dis.13:105−107, 1946.
4) 井田 博久、 花田 信弘:ミュタンスレンサ球菌の臨床生物学、 初版、 クインテツセンス、 東京、 2003、 82−89頁
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