|
古くて新しい歯性病巣感染
日本口腔感染症学会
常務理事 田 中 義 弘
最近、 52歳の女性で髄膜脳炎と脳膿瘍で肝膿瘍の方が内科から紹介受診しました。
今年6月下旬より発熱、 頭痛があり近医の投薬で軽快しないため某病院受診し、 項部硬直、 血液検査で髄膜炎と診断され、 髄液培養で肺炎桿菌を認めました。 その後脳炎を疑わしめる意識レベルの低下があり MRI で多発性の脳膿瘍が認められ、 当院に転院しました。 CT で肝膿瘍もあり、 これらの病巣感染の原因を含め精査目的で歯科受診しました。
現病歴から6月に10年前に右下顎に入れたブレードインプラントの咬合時痛があり、 咬合調整したそうです。 しかし、 当科初診時にインプラントの動揺もなく、 デンタル XP ではわからなかったけれど、 CT でインプラント前後の近遠心側に骨の吸収像があり、 ほかにフォーカスもないようで、 エピソードからはインプラントが一番疑わしいのです。 そのため、 これを摘出しましたが、 細菌培養では何も検出できませんでした。
この例のように歯科の病巣や治療が病巣感染のエピソードとして非常に疑わしい例は他にもあり、 内科の地方会に時々報告されています。 しかし、 細菌の同定なしには確定的なことはいえないわけで、 個々の事例についても内科から歯科に問い合わせもなくフィードバックもないまま放置されているのが現状ではないかと思います。
同様に日本内科学会の IE の予防、 診断、 治療ガイドラインによると、 2001年〜2002年に848例の IE があり、 54%は原因不明でしたが、 18%は歯科治療後に発生していました。 すなわち、 関連のはっきりしていそうな例の第1位が歯科治療なのです。
超高齢社会となって、 コンプロマイズドな患者が増加し、 今までの8020運動による歯牙の保存、 残根上義歯の推奨などによって慢性の炎症病巣を残してきたことがかえって災いとなることがあり、 私たちの学会で内科学会と協同してこの問題に取り組む必要を感じるとともに、 歯科界に対して慢性病巣のある歯牙は抜歯時期を誤らないことを改めて勧告する必要を痛感している次第です。
|