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3) 大学病院の立場から
―歯科大学における感染教育の現状―
東京歯科大学水道橋病院口腔外科
柿澤 卓
HIV 感染者は年々増加しており、
それに伴い歯科の需要も増加している。 しかし、
我が国における HIV
患者に対する歯科医療は遅れているのが現状である。
依然として感染者に対する診療拒否があり、
また例えば東京都・同歯科医師会で実施しているエイズ歯科診療所紹介事業に参加する協力歯科診療所の数も増えない状況にある。
このようなことから、
感染者診療を忌諱する既成の歯科医師を再教育することは難しく、
将来を担う学生や研修医を教育した方が遙かに効率がいいと考える。
しかし、 歯科大学自体の HIV/AIDS
教育が遅れているという懸念もある。
(目的) 以上のようなことから、
歯科登院学生と臨床研修医に対して、
院内感染予防を含め HIV/AIDS
患者治療に関する知識および意識について、
アンケート調査を実施し、
現状を把握するとともに今後の教育の方向性を模索する。
(方法および調査項目)
調査方法:アンケート用紙による調査。
調査対象:登院学生―73名、 歯科臨床研修医―19名。
調査項目:・自分が HIV
抗体陰性か陽性か知っているか?・自分が HIV
抗体陰性か陽性か知る意義は?・スタンダードプレコーションとはどのようなことか?・スタンダードプレコーションの具体的方法は?・正しい外来手洗い法は?・HBV/HCV/HIV
患者の治療に対して抵抗があるか?・HBV/HCV/HIV
の感染力の強さについて?・HIV
感染者を担当した場合の対応について?・HIV
感染者に歯科治療はどうあるべきだと思うか?等
(結果) 自分が HIV 抗体陰性か陽性かは80%のものが知っていたが、
知らないものも20%いた。 知る意義については、
ほとんどのものが自己への感染予防であることの認識がなかった。
スタンダードプレコーションについては、 40%のものが理解しておらず、
知っていると答えたものも全ての患者は“感染症の可能性があるので、
全患者に同じような感染予防対策を実施する”程度の回答しかなく、
基本的な隔離予防策との認識はなかった。
したがって、
具体的な方法も漠然とした知識しかなかった。
正しい外来手洗い法については、
半数以上が正しい手洗い法を知らず、
手術室での手洗いと混同しているものが多くいた。 HBV/HCV/HIV
の感染力の強さについては、 約60%しか正解がなかった。
つぎに、 HBV/HCV/HIV感染者の治療に抵抗があるかという質問に対しては、
何れに対しても約80%が何らかの抵抗を感じており、
その理由として感染が怖いが最も多く、
ついで知識や経験がないが続き、
一般人の意識とあまり変わらない結果であった。
しかし、 HIV
感染患者を担当した場合どのように対応するかについては、
スタンダードプレコーションを徹底して治療にあたるとか、
特別とは思わない、 差別なく行う、
もっと知識を持ちたい、
このような治療に携わることに誇りを持つなど、
積極的な意見が多数を占めた。 HIV
歯科診療の在り方についても前向きな意見がほとんどであった。
(考察) アンケートの結果、
登院学生と臨床研修医にはほとんど差はなかった。
全体として座学での知識程度しかなく、
実践の臨床に基づいた知識に乏しく、
また経験もほとんどないために HIV
に対する一般人と同様の恐れが見受けられた。
これは歯科大学病院の HIV歯科治療に対する臨床への消極的姿勢が、
臨床教育に反映した結果ではないかと考える。
しかし、 HIV 歯科医療に対する学生らの、
将来的な積極姿勢が伺える調査結果であった。
今後は、 図に示すような HIV
の弱感染性をベースにしたスタンダードプレコーション・被差別・プライバシーの関連(HIV-Medical
Care Diagram)を提唱したい。
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