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「HIV/AIDSと歯科医療」
1) 拠点病院歯科の立場から
大阪市立総合医療センター 口腔外科
大石 建三
日本における HIV 感染症患者は増加の一途を辿っており、 当院においても平成5年12月の開院以来感染症センターを受診する患者は増加している。 それに伴って歯科治療を希望する患者も増えてきている。 しかし一般歯科医療の現場においては未だ受け入れ体制が整っているとは言い難く、 患者の大半は拠点病院の歯科または一部の大学病院に集中するのが現状である。 よって私たち拠点病院歯科の立場では患者の治療はもちろんのこと、 HIV 感染症患者に対する社会的背景の流れをも十分把握した対応が必要になる。 今回は HIV 感染症患者が比較的多く来院している現場の歯科診療の現状と若干の症例を報告したいと考える。
現在、 当院感染症センターでは190名 (2004年8月現在) の患者が来院され、 男性163名、 女性27名で、 そのうち75名 (男性64名、 女性11名) が当院口腔外科を受診している。 当科への来院経路は感染症センターからの紹介が大半で、 あとは患者本人が直接来院である。
当院の HIV/AIDS 患者数の推移は2001年まで急激な増加傾向にあり、 以後横ばいである。 年齢別では、 20歳代60例、 30歳代62名、 40歳代36例で3%と大半を占めていた。 感染経路としては同姓間性的接触による感染が56.8%を占め異性間性的接触による感染が21.6%、 両性間性的接触患者が5.8%、 母子感染および血液製剤による感染患者は2.6%であった。 他は薬物常用患者1例と感染経路不明患者であった。 全体として日本の感染経路別統計と一致する結果であった。
口腔外科受診患者の症状の内訳は歯周炎38.7%、 う蝕28.7%、 智歯周囲炎14.7%、 口腔カンジダ症8.0%でその他は歯肉出血、 舌炎および口唇ヘルペスがそれぞれ1.3%で症状なしが4%であった。 観血的処置は36名の患者に行った。 内訳は埋伏抜歯8例、 難抜歯19例、 普通抜歯52例、 歯根端切除術1例、 消炎処置2例および出血処置1例であった。 このうち下顎智歯の難抜歯、 上顎第一大臼歯および上顎第2大臼歯の普通抜歯の2症例で感染はないものの創傷治癒遅延がみられた。 それぞれの CD4+数は76, 15, 62/と低値であった。 すべての症例で時間を要したが感染の兆候もなく治癒した。
感染予防対策についてはいわゆる“スタンダードプリコーション”の概念に基づいて行っている。 術者については手袋、 ゴーグル、 ガウンを着用し、 血液、 口腔分泌液に汚染される部位に対しては、 ラッピングを施し、 各患者毎にユニットの清拭による消毒を行っている。 印象材の取り扱いは基本的にシリコン印象材で、 採取後十分な水洗を行い、 0.2%グルタールアルデヒド液に浸漬し石膏を注入している。
HIV/AIDS 患者の歯科治療を行うにあたっては。 疾患に対する正しい知識を認識していれば基本的に通常の感染予防対策で十分な治療を行うことが可能である。
今後の課題としてはどこの歯科医療機関でも受け入れ可能となることが理想であるがそのために@拠点病院歯科あるいは口腔外科で行われている HIV/AIDS 患者治療の現状の把握と整理ならびに歯科医療界への反映Aスタッフを含めた教育の底上げが急務であると考える。
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