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1. 大阪歯科大学附属病院におけるインフェクションコントロールチーム設置の検討
大阪歯科大学附属病院 1)ICT 検討委員会
2)院内感染防止委員会
木下 智 1),2)、 大久保 直 1),2)
岡森 景子 1),2)、 宮地 和子 1),2)
野木 弥栄 1),2)、 川原 幹夫 1),2)
武田 茂 1),2)、 小谷順一郎 2)
今井 久夫 2)
大阪歯科大学附属病院におけるインフェクションコントロールチーム
(ICT) の必要性および ICT
を設置する際の活動方法について検討するため、 ICT
検討委員会が設置された。
本委員会は平成15年12月に設置され、 歯科医師、
医師、 薬剤師、 看護師、 歯科衛生士、
臨床検査技師および事務職員により構成されている。
これまでに院内各所における院内感染防止対策の現状把握、
対策を検討する上での当院の特徴分析、 院内 ICT
ラウンド方法の検討および他院 ICT
活動の見学を行った。
本院では種々の感染防止対策がなされているが、
全科で統一されていない場合や、
旧来の対策が踏襲されている場合もあった。
本院の特徴としては、 診療科は歯科、 耳鼻咽喉科、
眼科および内科で、 歯科の診療割合が高いこと、
病床数は37床で入院に比し外来患者数が多いことなどが挙げられた。
また ICT
活動のシミュレーションを兼ねた実働としてSARSマニュアルの作製、
院内感染防止対策マニュアルの改訂 (現在作業中)、
感染対策の講演等を行った。
本委員会の検討および活動により、 今後、
本院における院内感染防止対策を行う際には ICT
を組成し、
本院の特徴や実情に合わせた活動をする必要があると考えられた。
今後、 大学および病院当局に ICT
設置および活動を訴えるとともに、
これまでの検討や活動を一般の歯科診療所における感染対策にも活用出来れば良いと考えている。
2. 歯科疾患により感染性心内膜炎を発症した von Willebrand 病患者の1例
神戸市立中央市民病院歯科口腔外科 口腔外科
津田 宜志、 竹信 俊彦、
田中 義弘、 高 済石、
河合 峰雄、 長野 紀也、
古谷 昌裕
歯周炎に起因した感染性心内膜炎を発症した von
Willebrand 病患者の1例を経験したので報告した。
患者は42歳、 男性で、 既往歴には von Willebrand
病があり加療中であった。 2004年7月7日に発熱と全身倦怠感を主訴に近医内科を受診した。
心雑音が聴取され、 さらに血液培養検査にてα-streptococcus
が検出されたため、 感染性心内膜炎が疑われた。
7月9日当院内科を紹介受診し、
心エコーにて僧帽弁閉鎖不全を指摘され同日入院となった。
7月14日に口腔内より出血を認め同部が感染源と考えられ、
精査依頼にて当科受診した。
口腔内診査とX線写真にて多量の歯石沈着、
歯周ポケットの形成を認めたため、
辺縁性歯周炎と診断した。
さらに両側下顎埋伏智歯を認めた。
胸部外科にて僧帽弁形成術が予定されていたため、
口腔衛生状態の改善と感染源の除去を目的とした治療を行うこととなった。
von Willebrand
病による止血困難や全顎におよぶ処置を考慮し、 第[因子製剤
(コンファクトFR) により VWF/F[の補充を行い、
全身麻酔下にて全顎にわたる歯肉剥離掻爬術および両側下顎智歯抜歯を行った。
術後良好に経過し、 8月7日退院となった。
9月2日胸部外科再入院となり、
9月8日に僧帽弁形成術が施行された。
術前後ともに良好な経過となった。
3. 病巣掻把術およびロキシスロマイシンの長期投与にて治癒した若年者慢性顎骨骨髄炎の1例
兵庫医科大学歯科口腔外科学講座
森寺 邦康、 岸本 裕充、
野口 一馬、 高岡 一樹、
名取 淳、 浦出 雅裕
今回われわれは、 10歳女児に生じた慢性下顎骨骨髄炎を2度の病巣掻爬術およびロキシスロマイシンの長期投与にて治癒した1例を経験したので報告した。
【患者】10歳、 女児。【初診】平成7年8月10日。【主訴】左側頬部腫脹および疼痛。【家族歴】特記事項なし。【現病歴】平成7年5月頃、
下顎左側臼歯部鈍痛を認め、
微熱および頭痛が発現するようになった。
数カ所の病院を受診するも、 原因は不明であった。
抗菌薬、
消炎鎮痛剤投与されるも症状が反復したため、
7月下旬に、
当院耳鼻科に紹介され8月4日入院となる。
耳鼻科より歯原性腫瘍の疑いで紹介来科した。【初診時所見】左側頬部にびまん性の腫脹、
左側大臼歯部から下顎枝にかけて腫脹および圧痛を認めた。
開口量約10o。【X線所見】パノラマX線写真で│8歯胚の遠心部より下顎切痕におよぶ下顎枝に境界不明瞭な透過像を認めた。
CTにて左側下顎枝は右側下顎枝に比べ約2倍肥厚し、
皮質骨が一部吸収していた。
咬筋の腫大と骨膜反応が著明であった。【臨床診断】歯原性腫瘍の疑い。【処置および経過】8月25日生検および│8埋伏抜歯術施行。
慢性骨髄炎の病理診断を得たため、 11月28日全身麻酔下に、
病巣掻把術施行。
手術後よりロキシスロマイシンを継続投与開始したが、
左側頬部腫脹と疼痛の再燃を繰り返すため、
平成8年6月4日病巣再掻爬術施行。
術後ロキシスロマイシンを投与し、
症状の急性増悪期にはロキシスロマイシンの投与を継続しつつその都度3〜14日間のβラクタム系抗菌薬の点静注または内服投与した。
ロキシスロマイシンを長期継続投与 (約5年間)
した結果、 症状は消失し現在開口量43o、
顔面も左右対称で経過良好である。
4. 訪問歯科診療の抜髄処置後に発症した敗血症の1例
埼玉医科大学口腔外科講座
藤井 景介、 今井謙一郎、
都丸 泰寿、 福島 洋介、
内藤 実、 小林 明男、
依田 哲也
訪問歯科診療のニーズは高まっているが必ずしも好条件下で処置が行われているとは限らない。
今回我々は糖尿病、 慢性腎不全、
肝硬変を基礎疾患にもつ患者に対し訪問歯科処置を施行したことによって敗血症を発症した1例を経験したのでその概要を報告した。【患者】67歳
男性【主訴】右側頬部の腫脹、
疼痛【既往歴】慢性腎不全、 糖尿病、
肝硬変【現病歴】2003年12月4日右下第一大臼歯の疼痛のため訪問歯科治療にて抜髄処置を受けた。
その後、 右側顎下部に腫脹疼痛が出現。
食欲低下および全身倦怠感も出現したため12月5日救急車で当院救急部受診し、
急性右下顎骨炎、
頚部蜂窩織炎の診断で当科緊急入院となった。【現症】体格中等度。
栄養状態不良。
右頬部から頚部にかけてびまん性腫脹があった。
発赤はなかった。 触診で熱感認め圧痛著明。 CRP23.88mg/dl
WBC 12074/【処置及び経過】入院当日CTにより顎下部に膿瘍とガスの産生を確認したため切開排膿、
抗生剤投与による消炎療法開始した。
翌日より意識混濁および動脈血ガスで pH 7.289と代謝性アシドーシスを認め、
維持透析開始と全身管理目的に12月7日腎臓内科へ転科となった。
動脈血培養で MRSA が分離培養され、
敗血症と診断された。 以降、
原発感染巣の処置については当科でドレナージ及び洗浄を行った。
全身状態改善なく2004年1月10日透析中止。 1月18日死亡された。
高齢化社会を迎えた現在、
さまざまな合併症をもつ患者を診察する機会が多くなり、
本症例のように重篤な結果を起こす可能性もあり、
患者の病態の掌握には今まで以上に注意する必要があると思われた。
座長総括
繁田 幸慶
(繁田歯科口腔外科クリニック)
1.
大阪歯科大学附属病院におけるインフェクションコントロールチーム設置の検討
病院におけるインフェクションコントロールは、
診療科が複数にわたりそれぞれの科の特殊性があり困難なものがある。
院内感染防止対策を行ううえでインフェクションコントロールチームの設置が必要である。
また同時にインフェクションコントロールチームには強力な権限が必要である。
2. 歯科疾患により感染性心内膜炎を発症した
von Willebrand 病患者の1例
歯周炎が感染源となった感染性心内膜炎の患者であり、
僧房弁置換術が予定された患者である。
出血性素因を有し、
僧房弁置換術の前に感染源除去のために全身麻酔下で歯肉剥離掻爬術、
両側下顎智歯抜歯術が施行された困難な症例であった。
歯周疾患が感染性心内膜炎を引き起こす可能性は周知のことであり、
歯周治療の重要性を示す症例であろう。
3.
病巣掻爬術およびロキシスロマイシンの長期投与にて治癒した若年者慢性顎骨骨髄炎の1例
10歳の女児で再燃を繰り返す慢性下顎骨骨髄炎。
全身麻酔下に病巣掻爬術。
術後よりロキシスロマイシン300mg/day
投与を結果的に約5年間投与し症状の改善を得た症例である。
長期間投与に対するインフォームドコンセント、
投与期間の問題、
投与濃度の問題等があると思われた。
4.
訪問歯科診療における感染根管処置後に発症した敗血症の1例
67歳男性、 慢性腎不全、 糖尿病、
肝硬変の既往症があり、
訪問歯科診療における感染根管処置後に急性下顎骨炎、
頸部蜂窩織炎を発症し治療を行うも MRSA
が動脈血培養から検出され敗血症と診断され不幸な転帰をとったしょうれいである。
在宅診療に隠れた危険性を示唆するもので地域の在宅医療にフィードバックすべき症例であろう。
また、 在宅医療における患者の全身状態の把握、
病態の把握がいかに重要であり、
在宅治療が困難であれば病院歯科を利用することも必要であろう。
5. HIV感染者におけるアフタの検討
1) 大阪大学大学院歯学研究科
高次脳口腔機能学講座
2) 奈良県立医科大学口腔外科学講座
森本 佳成 1),2)、 丹羽 均 1)
今井裕一郎 2) 、 桐田 忠昭 2)
[緒言]
アフタは歯科臨床においてよくみられる病変である。
一方、 HIV 感染者においては、 CD4 +リンパ球数<100/と低下すると、
時に直径6mm 以上の巨大アフタが出現し、
難治性となり摂食障害などをひきおこすことがある。
今回われわれは、 HIV
感染者におけるアフタの発生状況について検討した。
[研究対象および方法] 対象は、 1995年〜2004年に加療を行った
HIV 感染者のうち、
アフタを観察・治療した7例である。
[結果] 7例のうち、
再発性アフタを認めた患者は4例であった。
発生部位は、 舌, 口唇, 歯肉のほか、
軟口蓋や咽頭にも見られた。 アフタを認めた時点での
CD4 +リンパ球数は459〜4.6/、 HIV-RNA 量は400未満〜8.4×10
4コピー/を示した。 治療は、
副腎皮質ホルモン軟膏の塗布が主であった。 しかし、
CD4 +リンパ球数<100/と低下した患者においては、
副腎皮質ホルモン軟膏の塗布のみでは難治性のため、
3例に副腎皮質ホルモン剤 (プレドニゾロン 40mg/日×4〜7日)
の内服が行われ治癒した。
直径10mm 以上の巨大アフタを認めた2例では、 CD4
+リンパ球数は4.6/および30/を示した。 後者では、
難治性の多発性アフタのため、
副腎皮質ホルモン剤の内服を行い治癒した。 しかし、
治療中断するとすぐに再発が見られたため、
低容量副腎皮質ホルモン剤の長期投与
(プレドニゾロン5mg 隔日投与) を行い、
アフタの再発を抑制できた。 本患者では、
免疫能の改善により、
アフタの再発は認めなくなった。
[考察] 高度に CD4 +リンパ球数が低下した HIV
感染者では、
巨大アフタが発症しやすく難治性であった。
副腎皮質ホルモン剤の全身投与は有効であると考えられた。
6. 口腔カンジダ症によりHIV感染症と診断され、妊娠中の妻の感染も判明した症例について
大阪市立総合医療センター 口腔外科
黒田 卓、 大石 建三、
佐野 寿哉、 連 利隆
ヒト免疫不全ウイルス (以下 HIV)
および後天性免疫不全症候群 (以下 AIDS) 患者は1981年以降、
増加傾向にあり、 口腔内症状を契機に HIV
感染の診断につながった症例報告も増加している。
今回われわれは、 口腔内症状を主訴に発見された HIV
感染症例を経験したので報告を行った。
患者42歳男性。
数ヶ月前より咽頭部に軽度の疼痛を伴う白色病変を認め、
近医耳鼻科受診し熱傷様症状との診断で含嗽を指示される。
しかし症状に変化がないため近医歯科を受診し、
白色病変を指摘され精査を勧められ2002年7月に当科を受診した。
初診時の口腔内所見は咽頭から硬口蓋にかけて周囲に発赤を伴った偽膜様の白色病変を認め、
臨床診断はカンジダ症と診断したが、 その病態から HIV
感染を含む免疫不全を疑い、 患者同意の元に HIV
抗体検査を行い陽性と診断された。
直ちに当院感染症センターに転科した。 また、
患者の妻は妊娠していることが判明したため、 妻も HIV
抗体検査を施行した結果陽性であった。
母子感染を防ぐため、 感染症科、 産科、 新生児科、
小児科のチーム医療が開始された. 2002年8月帝王切開により出産し、
生後2年3ヶ月経過した現在、
子供に感染は認めていない。 また、
両親とも日和見感染の発症も無く、
ひき続き経過観察を行う予定である。
7. 当科で入院加療を必要とした重症感染症に関する統計 −歯科衛生士の立場から−
大阪労災病院歯科口腔外科
久保 順子、 水谷 雅英、
磯村真理子、 杉浦 保司、
竹田 宗弘、 吉岡 秀郎
口腔内は細菌の増殖に非常に適した環境であるため、
辺縁性歯周炎や根尖性歯周炎などの慢性的に経過する軽度の口腔感染症は日常的にみられる疾患である。
それらの慢性炎症は様々な因子により急性化し、
放置しておくと口腔周囲の隙に次々に炎症が波及する蜂窩織炎となり、
気道の狭窄あるいは閉塞、 敗血症、
ガス壊疽などに移行していき、
致命的となる場合もある。 そこで2001年1月1日から2004年8月31日までの3年8か月に当院歯科口腔外科を受診し入院加療が必要と判断された重症歯性感染症患者66名について男女比・年齢・原因歯・原因疾患・炎症部位・基礎疾患・開口障害および嚥下障害の有無・気道閉塞の有無・入院期間・血液検査データについて検索した。
また、
歯科衛生士の立場から退院後の口腔衛生に対する意識変化や歯科受診状況についてアンケートにて追跡調査を行ったのであわせて結果を報告した。
1. 原因歯は下顎智歯または下顎大臼歯に多く、
原因疾患は根尖性歯周炎または智歯周囲炎に多くみられた。
2. 90.9%に開口障害または嚥下障害を認め、 19.6%にCT上で気道狭窄を認めた。
また、 2名にガスの産生を認めた。 3. 退院後、
定期的に歯科医院で口腔清掃を行っているのは42.9%であった。
最後に今回の検討から口腔外科の歯性感染症の入院患者に対し、
口腔への意識を高めるために、
歯科衛生士がより積極的に入院中または退院時に口腔衛生指導を行っていく所存である。
座長総括
椎木 一雄
(いわき市立総合磐城共立病院歯科口腔外科)
5. HIV感染者におけるアフタの検討
口演内容は、 HIV
感染者におけるアフタの発生状況と免疫能低下との関連性を検討したものである。
30例の HIV
感染者のうちアフタを認めた7例について、 CD4
+リンパ球数ならびに HIV-RNA 量を測定し、
そのうち直径1cm 以上の巨大アフタを認めた2例では
CD4 +リンパ球数が著明に減少していた。 極端に CD4
+リンパ球数が低下した HIV 感染者では、
巨大アフタが発症しやすく難治性である。
アフタの治療は副腎皮質ホルモン軟膏の塗布が主であるが、
1例の難治性多発性アフタに対しては低容量の副腎皮質ホルモン剤の長期内服投与をおこない再発を抑制し得た。
質問:HIV
感染者のアフタ発生頻度ならびにアフタの発生要因について。
回答:発生頻度については経験症例が少ないのでわからないが、
文献的には4〜5%である。
発生要因についてはやはり免疫能低下が大きなファクタ−を占めていると思われる。
6. 口腔カンジダ症によりHIV感染症と診断され、
妊娠中の妻の感染も判明した症例について
口演内容は、 口腔内症状 (口腔カンジダ症)
を契機に HIV 感染症と診断され、
妊娠中の妻の感染も判明したため、 薬物療法、
帝王切開により母子感染を防ぎ、
子供に感染を認めず無事出産しえた症例の報告である。
質問:本症例で HIV
感染を疑った根拠と妊婦に感染が判明した場合の中絶の適否ならびに妊婦に対する治療について。
回答:診断根拠は健常者ではみられない広範囲の口腔カンジダ症がみられたこと、
問診により感染の機会があったことがわかったため、
血液検査を施行し、 CD4、 CD8 の減少ならびに HIV
抗体陽性が判明した。 感染妊婦の出産については、
充分な抗ウィルス剤の使用によりウィルス量が減少すれば母子感染は防げるので必ずしも中絶を勧めるものではない。
本症例でも抗ウィルス剤の使用と帝王切開により出産させたが子供に感染は認めていない。
座長から、 貴重な経験なので、
会員に広く知っていただくよう論文としてまとめていただきたいとの要望があった。
7.
当科で入院加療を必要とした重症感染症に関する統計
−歯科衛生士の立場から−
口演内容は、 入院を必要とした重症歯性感染症患者66名の病状ならびに経過の報告である。
口腔領域の感染症患者では、 入院中は開口障害、
嚥下障害で口腔内の清潔が保てないこと、
退院後に行った口腔衛生に対する意識調査で15名が口腔清掃のため定期的に歯科医院を受診しており、
11名がブラシングを丁寧にするようになったと回答していることから、
口腔への意識を高めるために歯科衛生士が入院時または退院時に積極的に口腔衛生指導をすることが必要である。
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