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3) HIV感染者/AIDS患者に対する
口腔衛生指導の経験
大阪市立総合医療センター 口腔外科
森本 浩公
我が国は先進国で唯一 HIV 感染者が拡大しており、
感染者は2010年には5万人に達すると予測されている。
一方で、 HIV
感染症は治療薬の進歩に伴って慢性疾患となり、
歯科を受診する機会も多くなっている。
大阪市立総合医療センターはエイズ拠点病院で、
感染症センターには平成16年8月までに190名の HIV
感染者/AIDS 患者が受診しており、
そのうち口腔外科を受診した患者数は75名である。
今回、 私が経験した HIV 感染者/AIDS 患者を通じて、
口腔衛生指導を行う上で苦慮した、
あるいは印象深い症例をお示しし、
歯科衛生士の役割について考察した (表1)。
HIV 感染者/AIDS
患者に口腔衛生指導を行う場合の注意点として、
免疫機能の低下とそれに伴う口腔病変、 HIV
感染による口腔乾燥、 また、
口腔環境に直接関連する抗 HIV
薬の副作用として口腔乾燥、 潰瘍形成、 味覚異常、
白血球減少および血小板減少、 抗 HIV
薬と歯科で使用する薬剤の相互作用等がある。
特に口腔乾燥はう蝕や歯周疾患の直接的要因となり、
歯周炎の急速な進行も報告されているため、
これらのことを患者自身にも理解してもらうことが大切である。
今回お示しした3症例はいずれも口腔清掃が不良でう蝕と歯周炎がみられたが、
口腔衛生指導に対するコンプライアンスは良好で明らかな改善が得られた。
しかし、 各々に問題を抱えており、
症例1では重篤な糖尿病と代謝異常、 また、 HIV
感染後の生活の変化が治療に少なからず影響している。
症例2では精神障害に対する配慮が必要であり、
症例3では HIV 感染症はもちろん、 糖尿病、
歯科疾患すべてに対して病識が乏しく、
聾唖というハンディキャップをもつ等、 HIV
感染以外の合併症や様々な要因を踏まえた口腔衛生指導であった。
HIV 感染者/AIDS
患者の口腔管理についての考え方を図1に示す。
口腔衛生指導を行う際、 @ HIV
感染症に対する正しい知識と認識をもつ、 A免疫機能や全身状態の把握を行う、
B口腔粘膜を注意深く観察する。 さらに、 HIV
感染者/AIDS
患者はその疾患の性格から差別的な偏見に過敏で、
転職や転居、 離婚等、
日常生活や人生そのものに大きい変化を余儀なくされる現実がある。
従って、 その日の体調や社会的、
あるいは精神的背景にも十分配慮した適切な対応が望まれる。
そして、
これらすべての作業が信頼関係の確立につながり、
口腔衛生指導の結果に反映される。 HIV 感染者/AIDS
患者に対する口腔衛生指導の方法に変わるところはなく、
以上のことは高齢化と共に増加する有病者や他の感染症患者等、
すべての患者に共通する医療人としての大切な姿勢である。
HIV
感染症という不治の慢性疾患を抱えて長期にわたり生活する上で、
口腔環境を良好に維持することは食生活の安定をはかり、
HIV
感染症の病態安定と消耗性症候群の発生を抑制する効果をもたらす。
このことから口腔管理は不可欠であり、
専門的な口腔ケアとQOLの向上に深く関わる歯科衛生士は大変重要な役割を担うと考える。
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