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歯周病における急性症状を示す疾患は、 歯肉膿瘍、 歯周膿瘍、 壊死性潰瘍性歯肉炎・歯周炎などであり、 とりわけ急性歯周膿瘍は、 急性期の歯周病の代表といってよい。 歯周治療未経験患者あるいはメインテナンス患者が急性歯周膿瘍を訴えて来院することが多い。 急性歯周膿瘍とは、 慢性歯周炎が急性化し、 膿瘍を形成した状態を言う。 歯周ポケットの入り口が、 何らかの原因で閉鎖され、 膿瘍が形成され、 組織内圧が亢進しているので、 腫脹、 圧痛、 自発痛を伴う。 主として歯周病関連細菌 (Actinibacillus
actinomycetemcomitans, Tannerella forsythus, Porphyromonas
gingivalis, Prevotella intermedia, Prevotella nigrescence, Fusobacterium nucleatum, Treponema Spp.) とグラム陽性連鎖球菌 (Streptococcus anginosus, Streptococcus interemedius, Streptococcus constellatus) が、 その発症に関与すると考えられている。 臨床症状としては、 当該部に自発痛、 圧痛、 発赤、 腫脹、 出血、 排膿を認め、 重度になると歯の挺出、 動揺度の増加、 咬合痛が顕著となり、 発熱、 所属リンパ節の腫脹などを認めることもある。 歯肉膿瘍、 歯根破折、 急性根尖膿瘍との鑑別が不可欠であるが、 歯内病変と合併していることも少なくない。
急性歯周膿瘍の基本的な治療法として、 膿瘍部に波動を触知する場合は、 排膿路を確保し当該部の組織内圧を軽減し、 疼痛を緩和させる。 排膿路の確保は、 膿瘍が比較的小さく (1歯に限局) 閉鎖された歯周ポケット入り口を容易に探りあてることが可能である場合は、 歯周ポケット内から排膿させる。 しかし、 膿瘍が大 (2歯以上にわたる) である場合、 あるいは歯周ポケットの入り口の探索が困難な場合などは、 膿瘍を切開し排膿を図る。 ついで、 ポケット内および膿瘍腔内を生理的食塩水や消毒薬などで十分洗浄する。 また、 抗生剤、 必要に応じて消炎剤や鎮痛剤を投与する。 テトラサイクリン系、 ペニシリン系、 セフェム系などの抗生剤が全身投与に用いられる。 全身投与する場合は、 原因菌に対する有効な薬剤の選択、 抗菌力、 持続性および歯肉溝滲出液中への組織移行性などを考慮しなければならない。 しかし、 緊急性が要求される場合は、 急性歯周膿瘍の主たる原因菌と考えられているグラム陰性菌に対する抗菌スペクトルを考慮し、 テトラサイクリン系抗生剤を用いることが多い。 薬物の全身投与における副作用や耐性菌の発現を抑制するため、 テトラサイクリン系抗生剤の歯周ポケット内局所投与が20年以上前から用いられるようになってきた1,2)。 急性症状のある場合は、 原則として、 歯周ポケット内から原因因子であるプラークおよび歯石を極力機械的に除去した後、 抗生剤を局所に投与する。 しかし、 抗生剤のみの局所単独投与でも急性症状の改善に有効であるとの報告も散見される3−5)。 歯の支持組織が減弱している歯や重度の根分岐部病変がある歯に、 咬合力が加わり急性膿瘍が発症することも少なくないので、 暫間固定や咬合調整が必要となることも多い。
膿瘍、 腫脹あるいは疼痛などの急性症状が消失したことで治癒したと捉えがちであるが、 対症療法にとどまらないよう患者に歯周治療を継続するよう勧めることが肝要である。 すなわち、 慢性歯周炎患者に対する歯周治療の原則が適応され、 歯周基本治療によって炎症性因子と咬合性因子を可及的に除去し、 必要に応じて歯周外科治療および咬合治療を適応し、 長期にわたってメインテナンスすることで歯の保存を図ることができる。 患者の理解と協力が不可欠であることは言うまでもない。
文献
1) Lindhe, J., Heijl, L., et al: Local tetracycline delivery using hollow fiber devices in periodontal therapy. J Clin Periodontol 6:141-149,1979.
2) 栗本桂二、 磯島 修、 他:ミノサイクリンの局所的応用による歯周炎治療法 LS-007による治療方法の臨床的検討。 日歯周誌30:191-205,1988.
3) 鈴木邦治、 田中宏司、 他:歯周炎急性症状に対するペリオクリン歯科用軟膏の臨床的効果の検討。 歯界展望78:1351−1360,1991.
4) 野口俊英、 浅井昭博、 他:辺縁性歯周炎の急性症状に対する塩酸ミノサイクリン含有局所投与剤の臨床的および細菌学的評価。 日歯周誌37:725-736,1995.
5) 梅田 誠、 萩原さつき、 他:歯周炎急性症状 (急性歯周膿瘍) に対する2%塩酸ミノサイクリン歯科用軟膏の歯周ポケット内投与の効果について。 日歯周誌 41:436-449, 1999.
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