座長のことば

急性期の歯周病をどう捉えるか

座長: 鴨井 久一
(日本歯科大学歯学部歯周病学講座教授) 

 

 歯周病は、 古くて新しい疾病と云われる。 その理由は、 古代より歯槽膿漏症と云う病名で齲蝕と共に歯科の2大疾患と位置づけられていた。 1950年頃までは、 全身説、 局所説が交互に入り交じり、 治療は対症療法が主体であった。 歯科医療の中心が齲蝕症から歯周病へと移行する間に、 実験的歯肉炎による局所のプラーク細菌の解明、 歯周病原性細菌の培養、 DNA プローブ、 PCR 法などが開発され病原性細菌の実態が明らかになってきた。 同時にコホート研究などの疫学的調査を踏まえて、 歯周病の病態像が解明され、 暴発期 (バースト期) と静止期を繰り返して、 病態の進行過程が解明されてきた。 また、 歯周病は全歯にわたって罹患する場合と部位・場所により特異的に発症することも疫学的調査の統計的解析により、 明らかになってきた。 その他、 歯周病は各個体の疾患に対する生体防御に関する免疫学的応答、 環境因子 (生活習慣としての日常生活の在り方、 喫煙、 飲酒など) などが関与し、 多因子性疾患と位置づけられている。 本シンポジウムでは、 急性期の歯周病の捉え方として、 形態・機能面、 さらに治療面から括めたものである。 
 形態面では、 歯肉上皮の内縁上皮におけるプラーク反応、 好中球、 リンパ球、 形質細胞の浸潤などの組織的変化と上皮性サイトカインの産生量を追求し、 急性期における病理検査の指標としての可能性を述べている。 
 機能面では、 従来の歯周病原性細菌の他に streptococcus milleri グループのグラム陽性連鎖球菌が急性期の膿瘍形成に関与していることが云われていたが、その中の S. anginosus の PCR 分析に必要な DNA プライマーの設計をして、 解析を行っている。 
 治療面では、 膿瘍部の切開、 抗生剤の全身投与、 局所薬物送達法、 暫間固定、 咬合調整など多岐にわたる選択法を述べている。 基本的にはプラークコントロールの確立により、 バースト期を如何に軽減させるかが重要なポイントであり、 将来的にバースト期が予知できるような検査法が確立されれば、 急性期の歯周病を予防することが可能になる、 と述べている。 
 将来的には、 急性期の病因子のより確実な解明を検査による予知性予測が可能となれば、 急性期の歯周病を抑制する可能性は十分にあると思われる。 今後の研究に期待するものである。