|
1. C型肝炎疑い症例に対する歯科診療実態調査
日本歯科大学歯学部衛生学講座
今井 敏夫
日本歯科大学歯学部歯科麻酔学講座
古屋 英毅、 砂田 勝久
日本歯科大学歯学部口腔外科学講座
佐藤田鶴子
日本歯科医師会
新井誠四郎
【目的】
C 型肝炎ウイルスは主に血液を介して感染し、 我が国ではその感染者が約150〜200万人いると推計されている。 歯科医師は歯科診療に際して患者の血液の接触は避けられず、 感染した場合肝炎、 肝がんへの移行率が高い。 さらに C 型肝炎ウイルスのワクチンが未だ開発中であることからも感染の予防対策は重要な課題である。 そこで本調査はC型肝炎ウイルス感染者が来院されたときに歯科医師がどのような保健行動をとっているかの現状を把握することを目的とした。
【調査対象と方法】
調査対象は日本歯科医師会会員のうち無作為に抽出した4500名を調査対象とし質問紙郵送調査法により実施した。 調査1年以内に C 型肝炎ウイルスキャリアーの歯科治療を経験した歯科医師から返送された用紙のうち記載漏れのない有効回答346通を対象に分析した。 調査内容は日本歯科医師会が作成配布した 「C型肝炎予防対策 Q&A」 を参考に作成した。
【結果および考察】
C型肝炎キャリアーの年間経験数は5人以下が75.7%と最も多く、 その情報は78%の者が問診によって得ていた。 診療時の手指洗浄は、 診療前・後の者が全体の87%を占めていた。 しかし手指乾燥には布製タオルを用いている者が49.3% も占めていた。 診療時の手袋の着用は常時手袋を着用している者は全体で67.3%であり、 その中で患者ごとに交換している者は全体の21.8%にとどまっていた。 また使用済み手袋を一般廃棄物として処理する者が13.9%も認められました。 C型肝炎予防対策 Q&A の冊子を知っている者が78.3%であったが、 そのうち74.8%は有効に活用していた。 以上から、 今後とも歯科医療従事者に対するC型肝炎予防の継続的な啓蒙・指導ならびにこれらを遂行する社会基盤の整備の必要性が望まれた。
質問大阪市立総合医療センター口腔外科 連 利隆
大学では手袋の使用について学生にどのように教育されていますか。
回答日本歯科大学歯学部口腔外科学講座 佐藤 田鶴子
学生教育の場では
@ 手袋の使用に関し、 知識としての教育を行っている。
A 学生実習としても、 手袋の取り扱い方を行っている。
追加西脇市立西脇病院歯科口腔外科 谷垣 信吾
粘膜に対する処置の際は、 CDC の Standard precations の対策が必要で手洗としては速乾性スリコミ式手指消毒剤の使用が有効と考えられる。
2. 小児 HIV 感染症患者にみられた多発性白板症の1例
大阪市立総合医療センター 口腔外科
黒田 卓、 大石 建三
佐野 寿哉、 連 利隆
ヒト免疫不全ウイルス (Human Immunodeficiency Virus 以下 HIV と略す)感染症患者の口腔症状の一つにEBV(Epstein-Barr virus) 感染による毛様白板症があり、 この病変は1984年 Greenspan らによって初めて報告された。 臨床的には毛状、 皺状あるいはヒダ状などが多く、 舌側縁に好発する。 今回われわれは、 小児 HIV 患者において口腔粘膜に多発性に出現した丘状の白板症を経験したのでその概要を報告した。
患 者:11歳女児。
初 診:平成14年3月19日。
主 訴:口腔内診査依頼。
家族歴:ケニア人の母親は AIDS によりすでに死亡。
現病歴:平成3年3月に母親が結核に罹患し、 ケニアで血液検査が施行され、 HIV 抗体陽性と判明した。 当時生後1ヶ月の本症例と父親 (日本人) の検査結果では、 本症例のみ HIV 抗体陽性であった。 その後、 未治療のまま、 就学前の平成8年8月に日本に帰国し、 他院小児科での再検査でも HIV 抗体陽性が確認された。 しかし、 それ以降も未治療のまま、 平成13年12月に右背部、 右上腕に帯状疱疹が出現し、 ACV を処方され5日間で治癒した。 平成14年1月咳嗽が出現し、 他院で入院治療を行ったが症状の改善がなく、 3月7日当院小児内科を受診した。 3月18日 AIDS および百日咳の診断で入院となり、 翌日口腔管理のため当科を受診した。 初診時 (CD4数65 VL 32000コピー) 軽度歯肉炎を認めたが、 その他特別な所見はなく、 3月23日から抗 HIV 薬が開始された。 その後、 経過観察をしていたところ、 平成14年10月9日(CD4数 354 VL 87コピー)、 歯肉、 頬粘膜、 上下口唇に無痛性で皺を伴った丘状の白色の小腫瘤を認め、 EBV および HPV 感染の可能性も疑った。 病理組織検査を施行したところ、 異型性を伴わない重層扁平上皮の増殖を認め核周囲が空胞状になったいわゆる koilocytosis 様の変化、 核の無構造化を認め白板症と診断された。 若干の考察を加えて報告を行った。
会員外協力者:大阪市立総合医療センター小児内科
外川 正生
3. 入院治療を行った歯性感染症患者の臨床的検討 鶴見大学歯学部口腔外科学第2講座
長島 弘征、 臼井 弘幸
中山 礼子、 星野 洋一郎
中川 洋一、 浅田 洸一
石橋 克禮
歯性感染症が重篤化をきたす要因を明らかにするため、 入院下に治療が必要であった歯性感染症患者について、 入院期間が7日以内であった25例を短期入院群、 8日以上であった30例を長期入院群とし、 この2群間で比較検討を行った。 対象は1997年1月から2003年6月までに入院下に消炎処置を行った55例で、 両群とも下顎に起因する例が多かった。 原因事項としては短期入院群では根尖性歯周炎が12例、 長期入院群では抜歯後感染によるものが10例と最も多く、 抜歯後の感染は入院が長期化しやすい可能性が示唆された。 年代別では短期入院群は30代と40代、 長期入院群は40代から60代が多く、 中央値で見ると10歳近くの差があった。 病悩期間は短期入院群では約90%の症例で症状発現から1週間以内であるのに対し、 長期入院群では34%の症例が1週間以上の期間で、 炎症が進行してから来院しているものと考えられた。 主訴は両群とも腫脹、 疼痛が多かったが、 長期入院群では開口障害を訴えたものが7例あった。 全身既往では長期入院群にはステロイドの長期間投与例や糖尿病患者が含まれており、 特に糖尿病に関しては7例すべてが1週間以上の入院が必要だった。 初診時の開口域が20mm以下の強い開口障害が短期入院群では9例で、 それに対し長期入院群では25例に見られ、 開口障害の強い例では消炎までに時間がかかる傾向だった。 初診時の臨床検査では長期入院群では白血球数とCRPが高値の傾向があり、 特に CRP は平均で短期入院群の約3倍の値を示し広範囲の組織損傷が示唆された。 MRI画像は短期入院7例、 長期入院21例で撮影し、 炎症の範囲、 膿瘍形成部位の診断に有用だった。 すべての症例で抗菌剤の点滴静注を行い、 両群とも第一選択薬として ABPC を多く用いていたが、 PAPM/BP や MEPM を使用していた場合も見られた。 カルバぺネムの使用は糖尿病を有する例、 炎症の範囲の広い例、 全身状態の悪い例に用いられ、 良好な効果が得られた。
質問大阪市立総合医療センター口腔外科 連 利隆
抜歯後感染が原因になったものが長期入院群で多い理由は何ですか。
回答鶴見大学口腔外科学第2講座 長島 弘征
抜歯は当科で行った例はないので抜歯時の状態は不明ですが、 その時点で炎症があり、 消炎されないうちに抜歯されたものもあると思われます。 これが炎症を強くしたものと考えられる例もあります。
質問大阪市立総合医療センター口腔外科 連 利隆
炎症がひどくなったのは開業医さんで経過観察を長い期間行っていたということはありませんか。
回答鶴見大学口腔外科学第2講座 長島 弘征
今回の例ではそのような例はありませんでした。
|