歯性感染症への私の選択する抗菌薬

座長:佐々木 次郎
仁厚会病院歯科口腔外科 

 佐藤会長から 「私の選ぶ第一選択薬」 という非常に難しいタイトルをいただいた。 そのうえ、 演者の人選まで任されてしまった。 
 まず、 開業医の代表として、 先にフロモックス○Rの市販後調査に中尾先生とともに協力していただいた森鼻先生を頼んだ。 講演の要旨:開業医の第一選択は、 安価で良質なもの。 また、 膿瘍があれば、 きちんとドレナージすれば回復が早いという、 原則に忠実な良い講演であった。 
 市中病院の代表として、 金川先生に頼んだ。 講演の要旨:歯性感染症の原因菌として、 嫌気性菌にもっと目を向けるべきだ。 歯周病の原因菌の主なものである、 プレボッテラとポルフィロモナスは、 抗菌薬の作用を不活化するβラクタマーゼ産生菌が多いので、 そのことを念頭において、 抗菌薬を選択すべきである。 先生は勤務先の病院の細菌検査室の国広誠子先生と、 永年、 嫌気性菌の臨床研究をされており、 その経験からの貴重な話であった。 
 大学病院の代表として覚道先生にお願いした。 先生は日本歯科医師会の生涯研修セミナーの講師をされており、 すでに話を聞かれた方も多いと思う。 講演の要旨:歯科での第一選択としては、 セフェム系のものが最も多い。 安全性からみると、 それで良いのであるが、 現実には抗菌力の低下したセファクロルなどが、 今でも勤務先の大学病院ですら、 口腔外科以外では処方されていることが多い。 今回、 調査してみて愕然とした。 世間で講演するだけでなく、 自分の大学においても教育が必要であるという、 誠に最もな教訓談であった。 
 支払基金の代表として、 福島県社会保険支払基金副委員長の椎木先生にお願いした。 講演の要旨:適応に則った適切な使用が原則。 また、 1日3回服用と指示しても、 薬剤によっては、食後の投与では著しく吸収が悪くなる薬剤と、 食後の方がかえって吸収の良くなる薬剤もあるという知識を持って使用してほしい。 今後は、 PK (Pharmakokinetics) と PD (pharmakodynamics) を考えながら21世紀の歯科医師の常識である。 このような、 保険の審査のことだけではなく、 聴衆の為になる講演であった。 
 さて、 座長の佐々木からも一言。 今後10年間は、 優れた抗菌薬が登場するとは思えないので、 今ある抗菌薬を耐性にしないで用いるための歯科医師の知識が求められている。 私であれば、 フロモックス○Rかジスロマック○Rを第一選択としている。 難治疾患に用いうるクラビット○Rは、 第一選択としないばかりか、 なるべく投与しないで、 次世代に取って置く。 また、 エールリッヒが古い時代にいった名言である 「原因菌を見つけて強く叩く」 は、 今でも生きている。 閉鎖膿瘍から針穿取した膿のグラム染色は、 顕微鏡さえあれば誰にでもできるものである。 フェイバー G セット○R(日水製薬) というグラム染色液は、 僅か5800円で入手できるものである。 活用していただきたい。