歯性病巣感染を検証する

      
東海大学医学部外科系口腔外科

座長:金子 明寛 

 歯性病巣感染は、 歯性感染 (慢性病巣) が原因で、 遠隔の臓器に二次感染を起こす病態で感染性心内膜炎を始め、 皮膚疾患など様々な疾患がある。 東京女子医大の菊池賢先生の10年間の感染性心内膜炎207例の起因菌の報告では46%が口腔レンサ球菌であり、 黄色ブドウ球菌は21%、 口腔由来と考えられるHACEK群(Haemophilus, Actinobacillus, Cardiobacterium, Eikenella および Kingella) は4%、 腸球菌6%、 真菌5%および培養陰性は17%であった。 培養陰性17%のなかには nutrient variant streptococci(NVS) が含まれていると考えられる。 NVS は発育に L-cysteine, vitaminB6 を要求する菌で通常の血液培地では発育が困難である。 NVS は2000年に Abiotrophilia, Granulicatella 属に再分類された。 感染性心内膜炎の起炎菌として注目を集めている NVS をヒト口腔から多数分離し実験的に定着能が高いことを井上昌一先生は明らかにされた。 
 口腔レンサ球菌が起因菌となる感染性心内膜炎はブドウ球菌と異なり亜急性の経過をとるため、 発症から来院まで数ヶ月経過するものもあり、 疫学的な調査は困難なことが多い。 
河合峰雄先生は66名の感染性心内膜炎患者の4例は歯科治療、 5例は歯科疾患が感染源であり、 適切な抗菌薬予防投与を行えば医原性感染性心内膜炎は予防できると報告された。 
 前2演題は、 口腔細菌が直接一過性菌血症を起こして発症する事に関連したご発表であったが、 後2演題は原発巣の細菌毒素および原発巣の細菌の免疫学的な反応によって発症する歯性病巣感染の診断および治療について報告された。 細菌の直接関与と異なり診断が極めて困難であるが、 中川清昌先生は凝集反応も一つの診断になることを示された。 櫻井一成先生は掌蹠膿疱症に関連したびまん性硬化性骨髄炎についてご報告された。 先生方が指摘されているように私達は歯性病巣感染の発症機序の更なる解明をしなければならないと考える。 
 近年、 歯性病巣感染についての認識は心臓冠状動脈の狭窄などさまざまな疾患に口腔細菌が関与していることが報告されるなど認識が新たになっている。 この時期に歯性病巣感染のシンポジウムを組まれた大会長浦出雅裕教授に感謝申し上げる。