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1.
ヒト唾液中の Candida albicans 剥離因子
奥羽大学歯学部口腔細菌学講座
○清浦(鎌形)有祐、 新田敏正
帝京大学医真菌研究センター
安部 茂、 山口英世
奥羽大学歯学部歯科薬理学講座
千葉 有
奥羽大学歯学部歯科補綴学第1講座
鎌田政善
奥羽大学歯学部診療科学講座
清野晃孝、 斎藤高弘
我々は、 既にプラスチックプレートなどに付着した
Candida albicans(以下 C.a)を剥離させる因子を健康成人の唾液中に認めている。
今回は、 成人と高齢者の唾液中の剥離活性と sIgA
量との関係を検討したので報告する。
剥離活性は C.aTIMM1768株を96well
プレートの底面に付着させてから、
唾液を添加してさらに培養し、
培養終了後にプレート底面に付着している C.a
量をクリスタル紫染色法で測定した。 そして、
唾液を添加していない場合と比較することで C.a
の剥離率を求めた。 唾液サンプル中の sIgA
量の測定は、 酵素抗体法でおこなった。
C.a に対する剥離活性が10%以下の唾液を有する者は成人(30歳から50歳)では24名中1名(4.1%)であったが、
高齢者(60歳以上)では44名中10名(22.7%)で、
活性の低下している者の割合は高齢者で有意に高かった(p<0.05)。
また、 剥離率も高齢者では有意に低下していた(p<0.05)。
次に高齢者の唾液サンプルを使用して、
剥離率の程度と sIgA 量との関係を調べた。 sIgA
量は剥離率が10%以下のサンプル(10名)中では218.8±177.9μg/ml
であったが、 剥離率が90%以上のサンプル(28名)中では467.2±345.4μg/ml
で、 剥離率が10%以下のサンプルでは sIgA
量が有意に低下していた(p<0.05)。 しかし、
剥離活性と sIgA
量が共に低下していないサンプルもあるため、
剥離因子の本体は sIgA ではないと考えられる。
質問鶴見大学歯学部口腔細菌学講座 前田伸子
Candida 剥離因子が分泌型 IgA
でないということを説明してほしい。
回答奥羽大学歯学部口腔細菌学講座 清浦(鎌形)有祐
剥離因子は、
その表現様式から考えて酵素様のものと思われる。
剥離活性の低下している唾液ではその他の抗菌タンパク量も減少している可能性がある。
この分泌型 IgA
と剥離因子との関係はさらに検討を進めているので、
次回の学会で報告したい。
質問鶴見大学歯学部口腔細菌学講座 前田伸子
高齢者の唾液流量はどの程度であったか。
回答奥羽大学歯学部口腔細菌学講座 清浦(鎌形)有祐
高齢者では唾液中の剥離活性が低下している者が割合が高かったが、
唾液流出量との関係は調べていない。 ただ、
流出量と剥離活性の高低に直接の関係は無いと考えている。
2. 根管充填後感染の発生率とその局所要因
第2報:急性化膿性根尖性歯周炎 (膿瘍併発) について
奥羽大学歯学部附属病院初診科
○大根光朝
いわき市立総合磐城共立病院歯科口腔外科
椎木一雄
奥羽大学歯学部口腔外科
大野 敬
根尖性歯周炎やその継発炎症は、 主に歯髄炎から経由するとされてきたが、 日常臨床において根充歯にも発症している。 後者は病因的には手術部位感染症(surgical site infections:SSIs)に属すると考えられ、 我々は後者を根充後感染 (仮称) として、 分析してきた。 本学会では、 歯槽膿瘍を併発した急性化膿性根尖性歯周炎 (以下、 根尖性歯槽膿瘍) における根充後感染について調査し、 臨床的、 X線的に分析した。
【対象】奥羽大学歯学部附属病院初診科、 口腔外科を1993-2002年に初診し、 臨床所見とX線所見により根尖性歯槽膿瘍と診断された405症例 (男性194、 女性211、 第3大臼歯は除く) であった。 これらは定型;歯髄炎、 根尖性歯周炎そして歯槽膿瘍を継発するタイプ、 根充後感染 (根充歯に発症するタイプ) に分けられた。 【項目】根充後感染の頻度、 X線的根充度、 重度 (骨体部への拡大、 びまん陰影や腐骨様の所見を伴う) 骨硬化の頻度。 【結果と考察】発症頻度:定型136例(36%)、 根充後感染269例(64%)であり、 根充後感染が多くを占め、 歯性感染症における臨床的重要性を示すと共に、 その概念を明確にする必要性を示唆する結果となった。 男女比:定型;0.78、 根充後感染;1.06、 平均年齢:定型37歳、 根充後感染40歳、 部位:定型;前歯22%、 小臼歯33%、 大臼歯45%、 根充後感染;前歯25%、 小臼歯16%、 大臼歯59%であった。 重度骨硬化:定型では11%に、 根充後感染では42%に認められ、 根充後感染の持続性で難治性の病態が示唆された。 根充後感染におけるX線的根充度:根尖より0-1mm;22%、 1-3mm;16mm、 3mm 以上;43%、 突出迷入13%、 穿孔3%、 不明16%であった。 根充後感染は死腔充填が大きな要因であるが、 適切とされる根充度でもかなりの頻度で発症していることは根管、 歯周感染巣の制御不十分な状態での根充や器具、 材料の汚染も関与していることを示唆していると考えられた。
質問鶴見大学歯学部口腔細菌学講座 前田伸子
歯内療法では根管充填のテクニックを大きな問題としているが、 今回の結果から根充の可否は根充後の感染の発生とは関係がないことが示された。 つまり、 根充の可否よりも根充前の細菌検査が重要ではないか。
回答奥羽大学歯学部附属病院初診科 大根光朝
適切な根充においても根充後感染が発症しているので、 感染の要因には歯髄や歯周における感染の制御不完全な状態での根管が発症の大きな要因と考えている。
回答奥羽大学歯学部附属病院初診科 大根光朝
定型的な根尖性歯周炎から発症した歯槽膿瘍と根充後感染における歯槽膿瘍では起炎菌に異なりがあるかもしれないと考えている。
追加鶴見大学歯学部口腔細菌学講座 前田伸子
(花田座長の質問に答えて) 歯髄炎では嫌気性菌が原因となることが多いが、 根管治療を繰り返した根充後の感染では嫌気性菌が少なくなり、 Entrococcus や Candida が多い傾向になる。
3. ドキシサイクリンの歯周ポケット内移行濃度の検討
あさひ銀行健康管理センター歯科診療所
○ 河野誠之、 金子明寛
【目的】歯周組織炎の治療はプラークを物理的、 機械的に除去することが最も大事であるが、 抗菌剤の局所および全身投与も併用されている。 テトラサイクリンは多形核白血球由来のコラゲナーゼの活性を抑制することにより、 歯周組織コラーゲンマトリックスの破壊を阻止するとの報告から、 米国では歯周組織炎の補助的治療剤としてドキシサイクリン20mg、 1日2回の低濃度療法が推奨されている。 今回、 ドキシサイクリンの200mg 内服時の歯周ポケット移行濃度を検討したので報告する。
【方法】あさひ銀行管理センター歯科診療所を受診し、 歯周ポケット内滲出液濃度、 抜歯創内濃度および唾液濃度の測定の同意を得た患者18人にドキシサイクリン (ビブラマイシン R) 200mg を内服し、 歯周ポケット内滲出液をペリオペーパー R で採取すると共に抜歯創内貯留液および唾液を直径6mm のペーパーディスクで採取し bioassay で測定を行った。
【成績】歯周ポケット内滲出液 N.D.〜3.1μg/ml (mean:2.24μg/ml)、 抜歯創内濃度 N.D.〜6.86μg/ml (mean:1.9μg/ml) および唾液濃度 0.14〜0.54μg/ml (mean:0.25μg/ml) であった。
【結論】ドキシサイクリンの200mg 服用時、 歯周ポケット滲出液への移行は優れていた。 Fusobacterium 属に対する抗菌力は、 マクロライド系、 ニューキノロン系薬剤より優れていた。
4. 小児のオトガイ下リンパ節に腫瘤形成をきたした猫ひっかき病の1例
広島大学大学院 医歯薬学総合研究科
顎口腔頚部医科学講座 (旧:口腔外科学第二)
○宮内美和、 小嶺満希子、 島末 洋
井上伸吾、 杉山 勝、 石川武憲
猫ひっかき病 (cat scratch disease:CSD) は、 猫のひっかき傷に起因する感染症で、 皮膚の局所反応、 リンパ節腫大、 発熱の3大兆候を伴うことが多く、 症状は、 一過性で自然治癒する疾患である。 18歳以下の患者がほとんどで、 夏から秋に発症する例が多く、 90〜99%の患者例では、 猫 (特に,子猫) との接触歴がある。 皮膚の局所反応はほぼ全例にみられ、 受傷約1週から10週後に皮膚病変の所属リンパ節腫脹や腫大が生じる。 リンパ節腫大の好発部位は、 腋窩、 頸部、 顎下、 鼠径部の順に多いとされている。 38℃以上の発熱は、 約30%の例にみられ、 病原菌は複数の病原体によることが多く複合感染の可能性もあるとされていたが、 現在では、 Bartonella henselae の感染に起因する病変と考えられている。
今回、 5歳の男児のオトガイ下リンパ節に腫瘤形成をきたした CSD の1例を報告した。 患児は、 初診の約1か月前にオトガイ下と胸部を猫にひっかかれたが、 発熱等の症状は発現しなかった。 初診の数日前から、 オトガイ下部に限局性の腫大を認め、 某歯科で、 抗生剤を投与されたが、 症状は改善せず、 当科を紹介された。 初診時の CT とエコー検査で、 オトガイ下部に鳩卵大で可動性のある腫大したリンパ節を認めた。 体温は36.3℃で、 腋窩、 鎖骨上部、 肘関節部、 鼠径部などのリンパ節腫大はなく、 血液生化学検査にも異常は認めなかった。 初診時の聴取既往から CSD をまず疑っていたが、 本例は小児であり、 他の RES 系腫瘍との鑑別も必要であるため、 腫大したリンパ節を全麻下に摘出した。 その割断面には膿汁がみられ、 炎症性病変が推定しされ、 組織像においても CSD が強く疑われた。 B. henselae の抗体検査の結果、 免疫抗体価は1024倍以上であった。 以上の諸点から、 臨床病態的に CSD と診断した。 術後の経過は良好で、 外来で経過観察中である。
質問:兵庫医科大学歯科口腔外科学講座 櫻井一成
本疾患はほとんど青年期以下の年齢層に発症するが、 成人例 (老人を含めた) との間に病態的な相違があるか、 また細胞性免疫機構における関与はどうか。
回答:広島大学大学院 医歯薬学総合研究科
顎口腔頚部医科学講座 宮内美和
青年期以下例と成人例で病態的な相違があるという報告例は今回調べた中にはありませんでした。
細胞性免疫機構については調べていませんでした。
質問:兵庫医科大学歯科口腔外科学講座 櫻井一成
本疾患の発症とT型アレルギーの関連性 (IgE,Mast cell の) はどうか。
回答:広島大学大学院 医歯薬学総合研究科
顎口腔頚部医科学講座 宮内美和
今回T型アレルギーとの関連については調べておりません。
質問:山口県立中央病院歯科口腔外科 金川昭啓
血清学的検査はどこの施設に依頼されましたか。
回答:広島大学大学院 医歯薬学総合研究科
顎口腔頚部医科学講座 宮内美和
外注検査で、 最終的には米国で検査しました。
質問:山口県立中央病院歯科口腔外科 金川昭啓
検査結果が判明するまでどのくらい日数かかりましたか。
回答:広島大学大学院 医歯薬学総合研究科
顎口腔頚部医科学講座 宮内美和
2週間程度かかったと思います。
5. 急速に骨融解を生じた下顎骨骨髄炎の1例
日本歯科大学歯学部附属病院口腔外科診療科
○山田 幸、 宮坂孝弘、 河内 崇
酒井康雄、 加茂親子、 熊澤康雄
われわれは、 下顎蜂窩織炎から急速に骨融解を生じた下顎骨骨髄炎を経験したのでその概要を報告した。 患者は26歳、 インドネシア人男性で、 日本企業で研修していた。 また、 日本語の理解が不十分であった。 平成13年8月2日下顎の腫脹を自覚し8月4日紹介医受診。 抗菌薬の投薬を受けたが症状改善しないため、 8月7日当院紹介来院した。 全身所見は、 著しい倦怠感を訴え、 体温38.6度の高熱で、 呼吸苦を訴えていた。 顔貌は頬部から頸部にわたり著しく発赤、 腫脹し、 同部皮膚が光沢を有し、 一部皮膚が自壊し、 波動を触知した。 開閉口障害のため、 口腔内症状は詳細にみることができず、 弓倉症状やワンサン症状も不明であった。 また、 歯科治療の経験はなかった。 臨床検査所見では、 特に著しい異常を WBC266×102/μl、 好中球79%、 CRP 40.7mg/dl と認めた。 パノラマX線写真は腫脹のため、 正確には施行できなかった。 処置ならびに経過:即時入院の上、 下顎蜂窩織炎の診断のもと、 切開排膿術を施行し、 抗菌薬を点滴投与した。 翌日、 CRP 値は低下したが、 炎症の軽減が認められなかったため、 ドレ−ンの追加を行った。 しかし、 病勢が拡大したため、 再度切開排膿手術を施行した。 術中、 多量の排膿と腐敗臭を認め、 細菌検査では Prevotella oralis を検出した。 8月13日には臨床検査結果も改善したが、 微熱が続くため、 抗菌薬を変更した。 同16日に原因歯を抜歯、 同31日軽快退院となった。 退院後、 外来にて通院加療をするが、 頬部の腫脹は完全に消退せず、 切開部も閉鎖しないため、 9月17日X線検査を施行した。 その結果、 骨融解と病的骨折を起こしており、 下顎骨骨髄炎と診断した。 しかし患者の社会的背景により、 11月12日をもって母国での治療となった。 今後、 このような複雑な社会的要因を有する患者の増加が考えられた。
質問:仁厚会病院口腔外科 佐々木次郎
前投与の抗菌薬がセファクロルのように効果の期待の低いものでなかったか報告してほしい。
回答:日本歯科大学歯学部附属病院口腔外科診療科
山田 幸
セフェム系の薬です。
質問:東海大学八王子病院口腔外科 坂本春生
菌の検出状況とその薬剤感受性について
回答:日本歯科大学歯学部附属病院口腔外科診療科
山田 幸
起炎菌は Prevotella oralis。 感受性は調べたが、 結果が出るまで時間がかかったため、 CMZ,CTX,CLDM 合成 PC など広く感受性がありました。
質問:東海大学八王子病院口腔外科 坂本春生
検出菌と重症感染症発症の関係について
回答:日本歯科大学歯学部附属病院口腔外科診療科
山田 幸
対症療法的に繰り返した処置や骨膜なども考慮する必要があります。 しかし、 局所炎症の強さが大きく影響していると考えております。
6. 呼吸困難を伴う重症感染症に対するミニトラックUの有用性
大阪労災病院 歯科口腔外科
○ 田中徳昭、 吉岡秀郎、 竹田宗弘
口腔外科領域で扱う重症感染症は、 いわゆる歯性感染症であり、 これらが周囲軟組織に波及し重篤化したものである。 いったん軟組織に炎症が波及すると、 炎症は組織構造学上の粗鬆な部位、 いわゆる隙を進展・波及路として炎症は広範囲に波及していくことが知られている。 炎症が広範囲に波及すると腫脹、 疼痛のほかに開口障害、 嚥下困難、 呼吸困難などの症状が出現する。 治療は抗菌薬投与による消炎が中心となるが、 対症療法として栄養補給や気道確保などの随伴症状に対する治療も必要となる。
これまで当科では呼吸困難を伴う症例に対して、 気管切開術を施行し気道確保を行ってきたが、 現在ではミニトラックUを用いた輪状甲状膜穿刺 (minitracheotomy:以下 MT) を施行しており、 良好な結果を得ている。 MT の特徴としては、 他の気道確保の手段である気管内挿管や気管切開と比較して、 非常に容易な手技であること、 確実な気道確保が行えること、 患者に対する侵襲が小さく創痕が目立たないこと、 MT 施行中も発声が可能であり食事も可能であること、 などが挙げられる。 口腔外科領域の重症感染症に対する気道確保は予防的気道確保であることが多く、 そのような予防的気道確保には手技が容易で確実な気道確保が行え、 かつ患者に対する侵襲が少ない MT が第一選択と考えられた。
質問:日本歯科大学歯学部口腔外科学講座 佐藤田鶴子
感染症では感染症に直接対策に対するもの意外に気道の確保ということが重要な要素となることは知られている。 本器具を感染症に緊急以外に使用することはありましたか。
回答:大阪労災病院歯科口腔外科 田中徳昭
緊急以外の用途で使用したことはありません。
7. 当科で診断したガス壊疽の6症例
関西労災病院 歯科口腔外科
◯鏡内 肇、 占部一彦、 北村龍二
兵庫医科大学 歯科口腔外科学講座
名取 淳
ガス壊疽はガス産生性壊疽性感染症の総称であり、 急速に炎症が進行し、 生命の予後を左右する重篤な感染症で早期診断の上、 速やかな治療が非常に重要であるとされている。 当科では過去4年間に6症例をガス壊疽と診断した。
(症例1) 48歳、 男性。 初診日:平成11年5月11日。 主訴:右側顎下部腫脹。 既往歴:特記事項なし。 転帰:当科で治療、 軽快。
(症例2) 52歳、 男性。 初診日:平成12年5月8日。 主訴:左側頸部腫脹。 既往歴:高血圧症、 糖尿病。 転帰:兵庫医大歯口外紹介、 軽快。
(症例3) 57歳、 男性。 初診日:平成14年1月21日。 主訴:左側顎下部腫脹。 既往歴:特記事項なし。 転帰:当科で治療、 軽快。
(症例4) 73歳、 男性。 初診日:平成14年4月30日。 主訴:左側頬部腫脹、 開口障害。 既往歴:糖尿病、 C型肝炎。 転帰:兵庫医大歯口外紹介、 軽快。
(症例5) 70歳、 男性。 初診日:平成11年1月6日。 主訴:両側顎下部腫脹
既往歴:慢性腎不全、 高血圧症、 慢性関節リウマチ。 転帰:阪大医病紹介、 軽快。
(症例6) 73歳、 男性。 平成14年2月27日。 主訴:左側顎下部腫脹。 既往歴:慢性閉塞性肺疾患。 転帰:阪大医病紹介、 他因死。
当科において重症歯性感染症に対し CT 撮影を行い、 画像上6症例をガス壊疽と診断した。 ガス壊疽は高齢者、 基礎疾患を有する患者に好発するとされているが、 自験例6症例中2症例が基礎疾患を有さない中高年者であり、 また、 診断には患部の捻髪音が有用とされているが、 歯性感染症が進行し深部軟組織への波及した場合には、 捻髪音の触知は困難と考えられることより、 進行性の歯性感染症においては早期に CT 撮影を行い、 ガス壊疽との鑑別診断を行った上で適切な施設で加療を開始する必要があると考える。
質問:東海大学八王子病院口腔外科 坂本春生
ガス壊疽と診断された根拠は何でしょうか。
回答:関西労災病院 歯科口腔外科 鏡内 肇
今回の6症例は CT 上ガス像が見られたことにより、 非クロストリジウム性ガス壊疽と考えております。 (クロストリジウム性は否定できませんが)
質問:鶴見大学歯学部口腔細菌学講座 前田伸子
ガス壊疽と診断されているが、 分離細菌で明らかにガスを産生しないものがあるが、 その点についてどう考えるか。
回答:関西労災病院 歯科口腔外科 鏡内 肇
嫌気ポーターを使用しておりません症例もありますので嫌気性菌の検出が出来なかった可能性があると考えております。
質問:山口県立中央病院歯科口腔外科 金川昭啓
ガス壊疽はガス産生菌による感染症であることから、 菌の検索のためには適切な検体採取および細菌検査が必要と考えますが、 いかがですか。 嫌気ポーターよりもシードチューブーの方が嫌気的菌の保存には良好です。 使用されてはいかがでしょうか。
回答:関西労災病院 歯科口腔外科 鏡内 肇
参考にさせていただきます。
8. 下顎部に膿瘍を形成した歯性感染症の2例
鹿児島大学歯学部口腔外科学第一講座
○川島清美 廣瀬聡子 能村嘉一
寺原英子 向井 洋 杉原一正
近年、 顔面部に膿瘍ならびに瘻孔の形成を来す疾患は比較的少なくなってきている。 顔面部に膿瘍ならびに瘻孔を来す疾患はその処置次第では、 顔面皮膚に瘢痕形成を来たし醜形を残して治癒することもあり治療に際しては審美性を考慮することも重要である。 今回、 われわれは小児手拳大の下顎部膿瘍の切開後に切開部の皮膚が壊死脱落した頬部膿瘍の1例と外歯瘻の治癒に高気圧酸素療法が著効を示した1例を経験したので、 その臨床的概要について報告する。 症例1は49歳、 男性。 左下顎部の小児手拳大の膿瘍形成を主訴に平成14年3月20日に当科を受診した。 37がう蝕に罹患するも長期間歯科治療を行うこともなく放置していた。 3月18日になり左下顎部の膿瘍形成を認め、 耳鼻科受診後歯性感染症の診断で当科を紹介され受診した。 直ちに切開排膿を行った。 切開後膿瘍の中心部の皮膚は壊死脱落し陥凹した。 以降外来にて創部の包交を行い創傷治癒を計かり最終的には瘢痕除去術まで行う予定であった。 患者は19病日を最後に仕事が多忙なことを理由に治療の継続を拒否された。 症例2は60歳、 女性で左下顎臼歯部の疼痛ならびに排膿を主訴に平成13年8月20日に当科を紹介されて受診した。 左慢性下顎骨骨髄炎ならびに下顎部膿瘍の診断であいにくと満床のため当科での入院加療が出来なかったために骨髄炎の術前療法として高気圧酸素療法 (HBOT) を行なった。 HBOT3回目には瘻孔は消失した。 顔面皮膚に瘻孔を形成する歯性感染症はその処置次第では顔面部に醜形を残す可能性もある。 顔面部の瘻孔を形成する疾患は完治するまでの観察が必要であり瘢痕ならびに醜形を生じたら何らかの外科的処置が必要となる。 しかしながら、 症例2のように顔面の瘻孔形成性疾患の治療に HBO を用いれば外科的処置を回避出来る可能性が示唆された。 以上、 下顎部に膿瘍形成をした2例について臨床的概要を報告した。
9. 後咽頭間隙に波及したガス産生性蜂巣炎の1例
埼玉医科大学口腔外科学講座
○今井謙一郎、 小林明男、 都丸泰寿
内藤 実、 福島洋介、 舟橋奈奈
後咽頭間隙に歯性感染症などの重篤な炎症が波及すると、 その解剖学的見地より急速に胸部に拡大し、 致死的な予後をたどることがある。 今回我々は、 73歳の女性に発症した後咽頭間隙膿瘍の1例を経験したので、 若干の考察を加えて報告する。
症例は73歳女性。 頬部から顎下部、 頸部にかけての著明な腫脹と、 嚥下困難を主訴に当科に来院した。 全身倦怠感と、 発熱があり、 軽度の呼吸困難があった。 顎顔面領域は、 強度の腫脹があり、 開口制限のため口腔内の診断が困難であった。 画像診断の結果、 下顎、 耳下腺隙に、 ガスを伴った膿瘍浸潤があり、 さらに咽頭後壁に拡大伸展し、 中縦隔、 甲状腺にも炎症の波及を認めた。 直ちに入院させ、 切開排膿術を施行した。 耳下腺隙より、 側咽頭隙に向かいドレナージを行ったところ、 ガスの排出を伴う大量の排膿を認めた。 細菌検査は陰性であった。 臨床症状は術後、 急速に改善した。
後咽頭隙は、 ドレナージによって直接開放することが困難で、 慎重な術前診断が重要であると考えられた。 又、 同部の膿瘍は、 著明な腫脹を伴わずに拡大することがあるが、 本症例は、 顔面部の腫脹を伴った。 原因に関しては、 外傷に起因するものが多く本症例も義歯による潰瘍が原因と推察された。
質問:西神戸医療センター歯科口腔外科 大西正信
炎症の進展を画像で見る限り外科もしくは耳鼻咽喉科とともに対応するべき症例であり、 幸いに本例では良好な経過を得られてはいるが、 今後のことを考えれば対応方法についてご検討されたい。
回答:埼玉医科大学口腔外科学講座 今井謙一郎
炎症の主座が翼突下顎から頬隙にかけての範囲でガスを伴っておりました。 従って、 その部位を先ず開放すべきと考えます。
10. 当科における顎口腔蜂窩織炎の臨床統計的検討
神鋼加古川病院歯科口腔外科
○村岡重忠、 李 進彰、 小林正樹
宗本幸子
2001年1月〜12月に当科を受診した口腔感染症患者の臨床統計的観察を行った。 対象は経静脈的に抗菌剤投与を行った6〜87歳の男性88例、 女性79例の計167例で、 それらについての臨床所見、 血液検査値、 原因菌の検出、 基礎疾患入院の有無、 紹介経路別などについて検討を行った。 167例中、 通院加療を行った症例は149例、 入院加療が必要であった症例は18例 (10.8%) であった。 紹介経路別にみると一次医療機関からの紹介は100例あり、 二次医療機関からは1例、 他科医院・病院11例、 院内2例、 直接来院は53例であった。 年齢はほぼまんべんなく見られ、 性別に差は見られなかった。 原因疾患は根尖性歯周炎が92例 (55%)、 P急発が26例 (16%)、 智歯周囲炎が23例 (14%) 抜歯後感染9例、 歯根嚢胞二次感染3例、 その他が14例であった。 発生部位は大臼歯に多かった。 初診時臨床所見の中で、 発熱、 内側への腫脹、 嚥下痛が有り、 開口障害が強い場合、 入院加療を行った症例が多かった。 血液検査を行った153例中、 正常値を越える白血球数の上昇が見られた症例に入院例が散見されており、 CRP 値に関しては CRP 値が0〜5.0は113例、 5.1〜10.0は27例、 10.1〜15.0は8例、 15.1以上は4例認められ、 入院がそれぞれ4/113例 (3.5%)、 6/27例 (22%)、 5/8例 (63%)、 3/4例 (75%) をしめており、 CRP 値が高いほど入院が多くなる傾向が示された。 基礎疾患の保有率は64例の38.1%で、 64例中6例 (9.4%) の入院があり基礎疾患無しでは103例中12例 (11.7%) の入院があった。 入院の有無で比較した場合、 基礎疾患が蜂窩織炎の増悪の要因とはなっていなかった。 細菌検査が施行された症例は18例だけであったが、 原因菌をみると、 好気性、 通性嫌気性菌のグラム陽性球菌が15株と多かった。
質問:神戸市開業 繁田幸慶
貴科における顎口腔蜂窩織炎の入院加療の判断基準はどのようになっていますか。
回答:神鋼加古川病院歯科口腔外科 村岡重忠
血液検査にて白血球数、 CRP 値の上昇や特に開口障害や強い嚥下痛を伴った内側への腫脹が認められる臨床症状を入院の基準としている。 それにあわせ個々人の臨床的な所見、 全身状態により決定している。
質問:兵庫医科大学歯科口腔外科 櫻井一成
上顎例 (前歯部17、 小臼歯部13、 大臼歯部22) が多く認められたが、 蜂窩織炎の発症部位はどこか。 また、 蜂窩織炎発症に至る感染波及経路についてはどう考えるか。
回答:神鋼加古川病院歯科口腔外科 村岡重忠
1) 上口唇から頬部にかけての外側への腫脹が多かった。
2) 触診にて波動を伴ったものを膿瘍形成。
3) 画像による検査も合わせて行っている。
11. 歯科治療後に敗血症性肺塞栓症をきたしたリウマチ患者の1例
神戸市立中央市民病院歯科口腔外科
○河合峰雄、 田中義弘
鳥取赤十字病院歯科口腔外科
西田哲也
下顎第二大臼歯抜歯後、 頬部蜂窩織炎を併発し、 敗血症性肺塞栓症を発症したリウマチ患者の症例を経験した。
患者は60歳女性で、 既往歴として慢性関節リウマチがあり1989年よりプレドニゾロン錠1日10〜15mg の投与を受けていた。 1999年11月末より右側下顎第二大臼歯の歯痛のため近医を受診し、 処置および投薬をされていた。 12月10日頃より右側オトガイ部の麻痺及び開口障害が発現、 その後発熱も生じ、 12月27日に同歯を抜去されたが、 開口障害が増悪し摂食不能となっていた。 2000年1月4日に玄関先で倒れているところを発見され、 当院救急外来に搬送された。 受診時には、 収縮期血圧は70mmHg 台まで低下していたが会話は可能であった。 体温は38.8℃末梢血液検査所見では、 白血球数5.2×103/mm3、 CRP35.0mg/dl であり、 頭部 CT 上で右側頬部に膿瘍の形成が認められた。 また、 胸部X線検査にて両肺野に多発性及び結節性の辺縁不明瞭な陰影の散在を認めた。 血液検査、 画像所見および臨床経過等より、 下顎骨骨髄炎、 頬部蜂窩織炎、 敗血症性肺塞栓症と診断した。 処置として右側下顎第二大臼歯の頬側歯肉を切開、 排膿させ洗浄をするとともに CMZ4g/日を19日間点滴投与した。 1月21日には排膿は減少、 開口量2横指まで回復し CRP0.2mg/dl と減少したため1月25日退院とした。 本症例は、 長期にわたりステロイド剤が投与されており、 免疫能低下を背景に重篤な感染症をきたしたと考えられた。 歯科的疾患が原因となって発症した敗血症性肺塞栓症の報告は少なく、 う歯が感染巣の原因となり本疾患に罹患した症例の報告が国内外に数報ある程度である。 また、 近年易感染性宿主の増加に伴い、 個々の症例に応じた局所的、 全身的免疫能に対する評価、 対応の重要性が強調されており、 これら双方の面において貴重な症例と考えられた。
質問:神戸市開業 繁田幸慶
入院までの経過が長いようですが、 抜歯処置後の抗菌剤の投与が為されていたか否か、 また投与されていても患者が服用していたか否かについて
回答:神戸市立中央市民病院歯科口腔外科 河合峰雄
抗菌剤投与はなされていなかった。
質問:神戸大学医学部麻酔科 土井久也
敗血症性肺 embolism と診断できたのでは。
回答:神戸市立中央市民病院歯科口腔外科 河合峰 雄
臨床経過、 胸部X線所見等から軽快したことが認められたことから内視鏡検査等は行わなかった。
12. 当科で経験した HIV 感染症患者50例の臨床的検討
大阪市立総合医療センター 口腔外科
○金 建三、 連 利隆、 黒田 卓
佐野寿哉
我が国における HIV 感染症患者は増加の一途を辿っており、 当院でも同様に増加傾向にある。 また歯科受診患者も増加傾向にありますが未だ十分な受け入れ体制が整っているとは言い難く患者の大半は HIV 感染症を伏せて歯科診療所を受診するか、 拠点病院の歯科または大学病院に集中するのが現状である。 当科では平成5年12月の当センター開設以来、 当科を受診した HIV 感染症患者は平成14年10月まで50名が受診した。 今回、 口腔外科を受診した50名について臨床的検討を行なったので報告する。
患者の内訳は感染症センター全体として男性115名、 女性22名で5:1。 口腔外科受診患者は男性43名、 女性7名で6:1であった。 平均年齢はそれぞれ35.6歳と37.0歳であった、 特に20代、 30代が圧倒的に多く患者総数の65.7%を占めておりました。 また AIDS 患者は30代、 40代に高い確率でみられ、 約10年の潜伏期を反映していると思われる。 感染経路別では同性間感染が最も多く69名で、 続いて異性間感染39名、 bisexual が11名、 血友病患者は4名、 母子感染は2名、 薬物乱用患者が1名であった。
当科受診患者の受診理由の内訳はう触と歯周炎の患者が多く、 続いて智歯周囲炎が多かった。 う蝕については多数歯にわたる患者が目立った。 智歯周囲炎については通常通り抜歯を行い、 術後も全例において経過良好であった。 血友病の患者に歯肉出血を1例認め、 凝固因子の注射と口腔清掃指導でコントロール良好となった。 口腔カンジダ症の1例は HIV 感染が判明するきっかけとなった症例であった。
進行性多巣性白質脳症を発症した1例を除いて AIDS 症状は消退または寛解してからの受診であった。 HIV 感染を理由に歯科治療あるいは外科治療を行うに当たって、 抗生剤の前投与を始め特に制限は経験しなかった。
質問:神戸市開業 繁田幸慶
AIDS 発症症例は全体の何%程度でしたか。
HIV 陽性患者でまだ CD4/CD8の ratio も逆転していない患者と逆転している患者で治療上の注意点は何かありますか。
回答:大阪市立総合医療センター 金 建三
HIV キャリアと AIDS 患者に対する治療のアプローチに大きな差は無く、 特にウィルス量の多い患者に対し、 感染予防は必要と考えます。
回答:大阪市立医療センター口腔外科 連 利隆
基本的に内科治療で AIDS 発症が消失後、 当科を受診することが殆どですが、 AIDS 発症期に当科を受診した場合は内科的治療の意見を得た上で、 患者への感染を予防するため、 他と隔離した治療を行います。 又、 好中球が500以下であれば抗菌剤の前投与を行っています。
質問:神戸市立中央市民病院歯科口腔外科 河合峰雄
HIV 患者の口腔ケアについて貴科で行われているガイドラインのようなものがあれば教えていただきたい。
回答:大阪市立医療センター口腔外科 連 利隆
口腔ケアについては、 通常患者と同じように歯周疾患、 齲蝕、 と粘膜疾患のチェックが中心で、 プロトコールは現在作成中であります。
13. クロイッツフェルト・ヤコブ病 (CJD) 患者の抜歯経験
兵庫医科大学歯科口腔外科学講座
○高橋由美子、 亀井孝悦、 本田公亮
夏見淑子、 浦出雅裕
クロイッツフェルト・ヤコブ病 (CJD) は痴呆症状が急速に進行し、 数ヶ月で無動無言状態となり、 1〜2年で死亡するとされている。 百万人に1人の有病率と言われ、 発病は初老・高齢期とされてきた。 ところが1996年、 英国を中心に多発した狂牛病との関連で、 牛肉を多食した若年者に CJD が発症している (変異型 CJD) と報告された。 病因は、 感染型プリオン蛋白によるとされており、 病状からは伝達性海綿状脳症 (TSE) とも呼ばれている。
今回われわれは“ほぼ確実な”孤発性 CJD 患者の抜歯術を経験したので、 患者の状態を含め WHO の TSE に対する感染防御ガイドラインおよび歯科医療における問題点を報告した。
患者は72歳の女性で、 1か月間に急速に痴呆が進行したため、 精査目的で当院神経内科に入院した。 一般内科的所見では異常なく、 CJD に典型的ではないものの周期性同期性放電 (PSD) 様の脳波所見を得た。 2週間後には典型的な PSD を認めたため、 CJD ほぼ確実例と診断された。 2か月経つと CJD の末期症状、 つまり、 嚥下運動、 吸飲反射、 把握反射は残存しているものの、 ほとんどの外界の刺激には反応せず、 不随運動を繰返した。 斜頸および咬筋硬直で、 喰いしばりの歯車現象を起こしていたため、 上顎前歯部の動揺と同部からの持続出血を認めたため原因歯の抜歯術をおこなった。
CJD はいわゆるプリオン病であるため、 一般に使用されている汚染除去法ではプリオン蛋白を不活化できないため汚染除去法は異なる。 1. 焼却。 2. 3%SDS 100℃5分、 A高圧滅菌134℃、 18分A132℃60分。 4. 1規定水酸化ナトリウムに2時間浸漬。 5%次亜塩素酸ナトリウムに2時間浸漬。
人体の感染性組織に歯科治療に関係する組織は含まれていないが、 リンパ組織が低感染性組織の範疇にある。
血液製剤会社では医原性 CJD の可能性のある硬膜移植、 または角膜移植の治療経験のある人、 下垂体由来成長ホルモン、 性腺刺激ホルモン、 BSE 保有国の牛由来製剤 (インスリン) を投与された人、 親戚縁者で CJD 患者のいる人、 1980年から1996年までの間に6ヶ月以上イギリスに滞在した人が除外されている。
イギリスでの変異型 CJD の患者数が100人を超えたので、 海外滞在者が多くなった本邦でもリンパ組織を扱う口腔外科的治療においては患者の海外渡航歴を確実に把握する必要があると報告した。
質問:神戸大学医学部麻酔科 土井久也
Biopsy はしましたか。
回答:兵庫医科大学歯科口腔外科学講座 高橋由美子
しておりません。
質問:神戸大学医学部麻酔科 土井久也
内科的な治療はされましたか。
回答:兵庫医科大学歯科口腔外科学講座 高橋由美子
家族の希望にて、 何も行われていない。
14. 骨髄移植後の慢性移植片対宿主病(GVHD)を伴う
急性リンパ性白血病(ALL)患者に対する口腔ケアの経験
神戸大学医学部附属病院歯科口腔外科
米田真理子
当院歯科口腔外科では口腔病変を有する院内患者への口腔ケアを歯科医師と共に歯科衛生士が積極的な受け入れを行っている。 今回小児科入院中の急性リンパ性白血病(以下 ALL)で骨髄移植後の慢性移植片対宿主病(以下 GVHD)を持つ14歳男児に対して口腔ケアを行う経験を得たので報告する。 (現病歴) 1999年に ALL を発症し同種骨髄移植施行。 同年4月 ALL 再発し、 同種末梢血幹細胞移植施行。 しかし2002年2月以降肝障害、 口腔粘膜の糜爛等の慢性 GVHD 症状が継続して出現し、 また初診時には ALL の再々発を認めた。 (初診日) 2002年6月11日口内炎・歯肉炎を主訴に当科初診。 (初診時口腔所見) 上下口唇は痂皮・腫脹・糜爛等により易出血性であり、 口腔内は乾燥し扁平苔癬に類似した口内炎を認め、 重度の歯肉炎、 歯頚部にはプラークの付着、 歯牙の白濁が認められた。 疼痛のため開口・摂食・ブラッシング等の困難を訴えていた。 (処置および経過) 歯科衛生士による継続的な口腔衛生指導・機械的歯面清掃、 口唇へのデキサルチン軟膏の塗布及び指導ファンキゾンシロップによる含衡法の指導、 歯頚部白濁部へのフッ素塗布等の処置により、 口唇・歯肉の炎症の改善を認めたが、 頬粘膜・口蓋・舌の炎症・疼痛に対しては残存した。 ステロイド(ケナコルトA含有)による含嗽指導が効果を発揮した。 初診時中心静脈栄養であったが口腔環境の改善に伴い経口摂取が可能となりその量も増大した。 しかしその後全身状態の急激な悪化により9月に不幸な転帰を辿ったことから、 短期間ではあったが、 口腔環境の改善により QOL 向上に貢献できた。 今後も院内の協力を得ながら他科入院患者を含めて口腔ケアの充実を歯科衛生士の立場から積極的に行いたい。
質問:東北大学大学院 発達加齢保健歯科学講座
小児発達歯科学分野 門馬祐子
・口腔ケアはどのくらいの間隔で行われたか。
・GVHD は何の組織から判定されたか。
・口蓋に水疱性病変は認められたか。
回答:神戸大学医学部附属病院歯科口腔外科
米田真理子
・週1回
・小児科です。
・水疱はみられました。
質問:神戸市開業 繁田幸慶
外来通院できる状態の口腔ケアは比較的行いやすいですが、 重症化するにつれ、 歯科衛生士の手を離れ、 看護士のケアへと移行することが多いと思いますが重症化した患者への病院歯科口腔外科の衛生士としてどのように係って行こうと考えておられますか。
回答:神戸大学医学部附属病院歯科口腔外科
米田真理子
歯科衛生士は科学療法前、 移植前の口腔指導、 口腔清掃には係わる事が出来たとしても、 移植後アイソレーション中のかかわりが出来ず、 その間に口腔衛生管理は看護師の手に委ねられます。 その間に行われる清掃は軟毛ブラシ、 綿棒による歯面清掃、 含嗽です。 白血球数の低下による感染、 血小板の減少による出血が予想されるその間こそ歯科衛生士による感染、 出血に留意した器械的歯面清掃を行うことにより感染源の除去が安全に行え、 患者による口腔清掃も容易に行える。 口腔清掃指導に対しても、 全身的治療の進行、 患者の口腔内を把握できればそれに応じた適切な指導が行えるのではと考える。 チーム医療の一員として歯科衛生士が専門的口腔ケアを継続、 積極的に関われるよう今後啓蒙していきたい。
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