実態調査を踏まえて;今求められる口腔感染症治療

座長・大西正信(西神戸医療センター歯科口腔外科)

  口腔感染症は恐らく人類誕生のときから存在する疾病と考えられるが、齲蝕や歯周病が細菌感染症であることが判った現在も、歯科の二大疾患であることも事実である。 

近年、抗菌剤が沢山開発され医療技術も著しく進歩したことから、重症の口腔感染症は減っているとか、抗菌剤の乱用から難治性感染症が増えているなどの話を耳にするが、いつの時代と比較してそう言えるのだろうか?EBMが言われて久しいが、口腔感染症についてもevidenceに基づいた治療ということを目指して、本学会が研究会として発足して早や10年が経過した。 

またもう一方のコンセプトとして、口腔感染症は一次、二次、三次のすべての歯科医療機関で重要な疾患であるから、それぞれの医療担当者が一堂に会して、議論を交わすことは大きな意義があるとの考えから本会はスタートした。  

この度10周年を迎えて、本シンポジウムの為に調査委員会を組織して、限られた期間であったが実態調査をしていただいた。その調査結果について、調査委員会を代表して大塚芳基先生から報告があった。続いて、一次医療機関を代表して麻柄真也先生に報告していただいた。 

金川昭啓先生には病院歯科を代表して口腔感染症の起炎菌についての詳細な検討から、歯性感染症は嫌気性菌による複数感染症が主であり、考慮すべきはβ-lactamaseを産生するグラム陰性桿菌であるとの話があった。  

古土井春吾先生には大学病院歯科口腔外科の立場から重症歯性感染症について、宿主側の因子、基礎疾患との関連性などの報告があった。 

最後に少し異なった観点から、抗菌薬には抗菌作用だけではなく、好中球機能など生体の防御機構に影響を及ぼす作用もあることを北原和樹先生からお話があった。 

いづれも口腔感染症に関して情熱を持って励んでおられる気鋭の先生方で、シンポジウムを大いに盛り上げていただいた。このシンポジウムで、口腔感染症の治療に当って、今何が問題でこれから先どのように取り組んで行くべきかなど、本学会の目指すべき方向性が見えたように思う。 

10周年の記念大会に、このようなシンポジウムを企画していただいた古森教授に感謝して座長のまとめとさせていただく。