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開業医の口腔感染症治療と病診連携 |
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まがら歯科医院 麻柄真也 1.緒言 日常臨床において口腔感染症患者の治療にあたる機会は比較的多い。内服抗菌薬の進歩により、感染症治療の幅は広がり、治療しやすくなったとはいえ、難治化、重症化する症例にも遭遇することがあり、適切な病診連携を行う上でも開業医の役割は重要である。しかし、治療法については経験に基づくことが多く、科学的根拠に乏しい一面もある。これまで、開業医における口腔感染症治療について学会レベルで論じられたものは少なく、データの集積もほとんどなされていない。また、歯科関連の雑誌や歯科医師会雑誌をみても、口腔感染症に関する記事は極めて少ない。これら開業医における感染症治療の情報の不足が、経験に頼らざるを得ない一因ともなっている。また、開業医は病院とは明らかに異なるシステム中で、種々の制約のもとに治療を進めなければならない。 そこで、開業医における感染症治療の在り方を明確にする第一歩として、口腔感染症実態調査の結果をもとに開業医における感染症治療の現状と病診連携における問題点について検討を行なった。 2.対象および方法 平成13年4月1日〜5月31日までの2か月間に実施された口腔感染症実態調査の結果をもとに検討を行った。対象は一次医療機関18施設のうち病院歯科2施設を除く開業歯科16施設である。 3.結果および考察 1)口腔感染症患者の割合とその内訳 初診総数3722例のうち口腔感染症患者は351例(9.4%)であった(15施設、1施設は初診数不明)。疾患群別の内訳は369例中(16施設)、I群263例(71.3
%)、II群69例(18.7%)、III群18例(4.9%)、IV群2例(0.5%)、V群16例(4.3%)であった(図1)。このうち二次医療機関へ紹介となった患者数はI群5例、II群5例、III群2例、V群4例の計16例(4.3
%)であった。これを1医院あたりでみると、2か月に1人の割合で紹介しているという結果であった。 2)第一選択薬 第一選択として使用された薬は、セフェム系177例(50.2%)、マクロライド系106例(30.0%)、ペニシリン系36例(10.2%)、キノロン系27例(7.6%)、ペネム系7例(2.0%)であった(図2)。マクロライドの割合が以前に比べ高いように思われるが、これはいわゆるニューマクロライドの出現以後、徐々に第一選択薬としての使用が増えていること、また最近ではアジスロマイシンという特徴ある薬がよく使われるようになってきたことによるものと考えられた。
3)投与薬剤数と治療経過
各患者に投与した抗菌薬の数と治療経過について検討を行なった(図3)。1薬剤のみの使用で自院で治療が可能であった症例は316例(89.0%)であった。これに対し、2ないし3薬剤を使用したが自院で治療が可能であったもの24例(6.8%)、1薬剤使用し二次医療機関へ紹介になったもの13例(3.7
%)、2ないし3薬剤使用し二次医療機関へ紹介になったもの2例(0.5%)であった。これら39例(11.0
%)については、第一選択薬のみで感染症状を消失させることができず、薬剤の変更あるいは二次医療機関への紹介といった何らかの工夫が必要となった症例である。つまり、約1割の症例には十分に効果が得られないことを認識して投薬を行い、その後の対処法も考慮した上で治療にあたる必要があると考えられた。また、近年発売されている抗菌薬の治験での有効率が概ね8〜9割であることと一致する結果であった。 4)薬剤投与期間と治療経過 次に、抗菌薬の投与期間と治療経過について検討を行なった(図4)。抗菌薬は基本的には3日間で効果をみることが多いため、3日間投与の症例が圧倒的に多かった。しかし、二次医療機関に紹介になった症例は1ないし2日目と7日目以後に多く、紹介に至るタイミングには2つのピークがあると考えられた。 5)感染症治療の流れ 以上の結果から開業医における感染症治療の流れを図式化した(図5)。開業医から二次医療機関への紹介には3つのパターンがあると考えられた。1つ目は、局所あるいは全身の状態から来院の時点で治療不可能と考え、紹介になる場合(・)。2つ目は、抗菌薬を3日間投与したものの、症状が悪化したため1ないし2日目に来院し紹介になった場合、あるいは来院の時点で薬剤を変更したがやはり効果なく紹介になった場合(・)。3つ目は、難治化という言葉は必ずしも適当ではないが、何度か薬剤を変更しながら症状がひどくもならないが良くもならずにだらだらと治療が続き紹介になった場合(・)。初診時に紹介になる場合や重症化した場合の紹介基準は、ある程度明確になっているものと考えられるが、治療が長引いた場合の紹介基準は非常に難しく、この点が開業医にとっての1つの問題点であると考えられた。 6)どのような場合に病院に紹介すべきか? 「どのような場合に病院に紹介すべきか?」という質問を開業医および二次医療機関に対して行なった(図6)。その結果は、大きく3つに分類することができた。1つ目は腫脹・疼痛が著しい場合など、局所症状に関するもの、2つ目は重篤な全身疾患のある場合や入院管理が必要と考えられる場合など、全身状態に関するもの、3つ目は画像診断(CT、MRI等)が必要な場合や他科疾患が疑われる場合など、診断に関するものである。その回答率をみると、二次医療機関では局所に関するものが約9割と非常に高い点、また、診断に関するものは開業医のみで二次医療機関では無かった点が特徴的であった。二次医療機関では感染症が重症化したために紹介をうけるというイメージが強いようだが、開業医では重症化したものと同様に診断がつきにくいものも問題であると考えているようである。二次医療機関には、紹介患者において診断に至った過程や治療内容等をできるだけ詳しく開業医にフィードバックしていただけるようお願い申し上げたい。また、開業医も二次医療機関に積極的に情報収集するようアプローチすべきである。それにより、開業医の感染症に対するレベルアップがはかられ、よりスムーズな病診連携が行なえるものと考えられた。 |