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口腔感染症の実態調査報告 |
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口腔感染症調査委員会 新日鐵広畑病院歯科口腔外科 大塚芳基
1.目的と対象 口腔感染症の実態を把握する目的で、本学会会員に対して前向き調査を実施した。対象は、平成13年4月1日〜5月31日までの2か月間に一次医療機関(開業歯科医院16、企業診療所2)18施設、二次医療機関(病院歯科口腔外科)14施設、三次医療機関(大学病院口腔外科)2施設の計34施設を受診した口腔感染症の827例である。調査項目として、初診患者総数と、感染症患者の年齢・性別・疾患群・原因歯・投与薬剤・抗菌薬の変更状況・併用療法・情報提供の有無をとりあげ、医療機関別に比較検討した。
2.結果と考察 初診患者総数(1機関を除く)9145例のなかでの感染症患者は809例8.8%であり、それぞれの医療機関における感染症患者の割合は、一次機関9.6
%、二次機関7.8%、三次機関10.2%と、いずれの機関とも1割前後の割合であった(図1)。 年齢は、各医療機関とも20〜60歳代までほぼ同数の分布を示し(図2)、性別分布でみてもどの医療機関でも性差はみられなかった。 口腔感染症を歯科薬物療法学会の分類(I群:歯周組織炎、II群:歯冠周囲炎、III群:顎炎、IV群:蜂窩織炎、V群:非歯原性感染症)で分けると、一次医療機関18施設(398例)での疾患群別内訳はI群289例(72.6%)、II群71例(17.8%)、III群20例(5.0%)、IV群2例(0.5%)、V群16例(4.0%)であった。二次医療機関14施設(336例)では、I群146例(43.5
%)、II群52例(15.5%)、III群23例(6.8%)IV群72例(21.4%)、V群43例(12.8%)であり、三次医療機関2施設(93例)では、I群とII群が各40例(43.0%)ずつ、III群0例、IV群5例(5.4%)、V群8例(8.6%)となっていた(図3)。これらのことから一次医療機関と三次機関ではI群とII群を合わせたものが約9割あり、一方、二次機関ではI・II群は半数強で、III群やIV群の中等症以上の感染症や、V群の非歯原性の感染症も多くみられた。また、感染の原因となった歯の部位をみると、すべての医療機関で下顎大臼歯が半数を占めていた(図4)。 抗菌薬の投与が行なわれていたのは、一次機関96.0%、二次機関95.8%、三次機関84.9%と、三次機関でやや少ない結果であった(図5)。抗菌薬の投与が途中で変更されていた症例は、一次機関では8.6%、二次機関9.7%、三次機関13.9%で、医療次元にかかわらず1割前後であった(図6)。さらに抗菌薬の変更が行なわれていた症例について、投与経路の点からみると、経口薬の中で種類を変更して投与していた症例が、一次機関では97.0%、二次機関87.1%、三次機関81.8%と、大部分を占めていた(図7)。残りの症例は全て経口薬から注射薬への変更であり、注射薬から注射薬への変更は今回の調査症例中にはみられなかった。また、一施設当たりに使用されていた抗菌薬の種類をみると、一次機関では2.9種類、二次機関では4.8種類、三次機関は11種類であった(図8)。 切開・根管治療などの併用処置は一次機関では49.5%と約半数であったが、二次機関では18.8%、三次機関は15.1%と一次機関に比べると少ない結果であった(表1)。これは一次機関では積極的な外科的処置が行なわれていたためと思われ、一方、二次・三次機関では観血的処置が行いにくいような有病者も多く見られることや、一次機関での切開後にこれらの医療機関に紹介された症例もしばしばみられることなどが推測された。 患者紹介について、一次医療機関から二次あるいは三次医療機関へ紹介された患者数は、I群5例、II群5例、III群2例、IV群0例、V群4例の計16例であり、1施設の1か月間当りでみると平均0.45人であった。一方、二次および三次機関でみると、疾患群別に占める紹介患者の割合はI群24.2%、II群50%、III群34.8%、IV群59.7%、V群37.3%であり、全体では感染症患者のうち38.2%が一次医療機関からの紹介患者であった(表2)。 3.まとめ 1)平成13年4月から5月に口腔感染症の実態調査を行った。 2)34施設827例を各医療機関ごとに分析した。 3)感染症患者の割合は、3つの医療機関とも約1割であった。 4)年齢分布は、20〜60歳代までほぼ同数の分布であった。 5)疾患群では一次および三次医療機関ではI、II群が9割と軽症の疾患が大部分を占めていたが、
二次機関では重症あるいは多彩な疾患が半数近くみられた。 6)原因歯は3つの医療機関とも下顎大臼歯が多い結果であった。 7)first choice の薬剤数は一次機関では2.9薬剤、二次機関では4.8薬剤、三次機関では11薬剤で
あった。 8)投与経路は、経口投与が一次機関ではほぼ全例で、二次および三次機関では約3分の2であっ
た。また、三次機関の15%は投与なしであった。 9)抗菌薬を変更していたのは、医療次元にかかわらず1割前後で、変更症例のほとんどは経口薬
から他の経口薬への変更であった。 10)他施設への紹介は、一次医療機関では感染症患者のうち4%を他施設へ紹介しており、二次・
三次機関は感染症患者のうち38.2%が紹介された患者であった。 |